拘縮の予防は関節を動かすことです。日常生活で関節の動きを増やすことで予防が可能です。しかし、固くなってしまった関節があるとき、介護する私たちはどんなことに注意していけばよいでしょうか。拘縮がある方へ介護をするときの注意点をまとめてみました。
拘縮による介護骨折
拘縮で寝たきりになった高齢者の方へ介護をするときに、注意したいのが骨折です。
関節が固くなった状態が拘縮ですが、介護をするときに無理な動作で介助することで骨折に繋がります。
拘縮のある方を介護するときの骨折
介護骨折は、どのような介助で起きるのでしょうか。
- 清拭や更衣
- 車椅子の移乗
- オムツ交換
1.清拭や更衣の介助でおきる介護骨折
寝たきりの方の介護で全身の清拭を行うときは、温タオルで体を拭き更衣します。
このとき、肘や肩に拘縮があると衣類の着脱が特に難しくなります。
介護事故のケースに「上腕骨がねじれて折れた」という事例がありますが、更衣介助で拘縮があると袖通しが難しいため、無理に動作を行うと骨折に繋がります。
2.車椅子の移乗介助などでおきる介護骨折
膝の関節や足首に拘縮があると立つことが難しく、車椅子で移動をすることになります。
一人で移乗介助をするとき、胴体を抱えるようにして移乗しますが、拘縮があり立てない状態では、体を持ち上げて圧迫することで骨折をまねきます。
3.オムツ交換のときの介護骨折
オムツ交換のときは体を左右に動かしながら行いますが、動かそうとして大腿骨頸部を骨折することもあります。
拘縮のある方への介護の注意点
拘縮がある場合に介護で注意したいのは、力任せに介助をしないことです。
拘縮があることで、関節に可動域制限が生じますが、無理に動作を行うことで骨折をまねくこともあります。
更衣のときの注意点
ズボンの足通しや上着の袖通しの介助を行うときは、関節を支えながら介助しましょう。
無理に腕や脚を引っ張って介助すると、ケガをする可能性もあります。
上着のときは、後ろ見ごろを肩まで上げて肘をしっかりと支えながら更衣すると、スムースに更衣できます。
車椅子の移乗の注意点
拘縮があり全く立てない方の移乗は、2人介助で行うのもよい方法です。
一人で行うときは、手で支える部分に思った以上の力がかかります。
2人で介助を行うときは、4つの手で支えるわけですから、力を分散して介助を行うことができ、介助を受ける方にも負担が少なくなります。
拘縮を悪化させないために
関節を動かすことで悪化する状態を防いでいきましょう。
リハビリの専門家であれば、リハビリの運動が行えますが、素人が適切な知識を持たずに行うと、リハビリによる骨折もありますので注意します。
最も簡単に安全に行えるのが、日常の動作です。
椅子に座ったり立ったりするのも良いです。
テーブルに両手を置いて行うと膝の関節に負担なく行えます。
上着を着る動作はいくつもの動作が含まれる動きですから、できるだけご自分で着ていただきましょう。
関節の動きが悪い時は、温タオルやホットパックなどを利用し関節を温めてみると、周りの筋肉の緊張がほぐれるようで効果があります。
拘縮で介護したいスキンケア
関節が拘縮するのは、脚や腕だけではありません。
手を握った状態で起こる手指拘縮や、足首が伸び切ったままの尖足も関節の拘縮です。
手を握った状態で拘縮が起こると、爪切りが難しく手の平を傷つけたり、指が接触した部分には汚れが溜りびらんや潰瘍などの障害を起こしてしまいます。
また、拘縮の状態が続くことで寝たきりとなり、床ずれ(褥瘡)ができやすくなります。
分圧することで皮膚を守る
同じ姿勢でいることで、体の同じところに圧力がかかり床ずれの原因となります。
体位交換の基本は2時間おきですが、エアーマットなどを使うときは4時間を超えない範囲で行います。
乾燥を防ぐスキンケア
高齢者の皮膚は乾燥でとても弱くなっています。
皮膚を守るバリア―をつくる力が低下しているので、かゆみを伴い掻いてしまいます。
掻き傷が炎症を起こすこともあるので、保湿して皮膚を守りましょう。
介護施設でよく使われているのは、ワセリンです。
ドラッグストアで購入できますから、一つ用意すると体全体に使えます。
目の周りには、専用のワセリンがあるようです。
汚染によるむれを快適にする
肌全体が乾燥することの多い高齢者も、陰部だけはむれています。
排泄物の汚れとむれで皮膚の状態が悪化します。
体位交換するときに排泄の確認も行い、汚染しているときはパッドの交換や洗浄を行いましょう。
パッドを重ねて使用しても、むれの改善にはなりませんので何枚も重ねて使うのはやめましょう。
拘縮の介護でポジショニングは重要
画像引用元:wowma.jp
拘縮がある場合は、体に負担のない状態や皮膚にも負担が少ない状態で寝ることが大切です。
その状態にするのがポジショニングです。
ポジショニングによって、関節を適切な角度で保つことで、拘縮による日常の生活の影響を少なくしていきます。
ポジショニングのポイント
- 膝の角度 10度~20度(膝を軽く曲げた状態)
- 肘の角度 90度
- 足首の角度 90度
- 手の指の角度 テニスボールを軽く握った角度
体の向きを変えたときは、膝や肘、足首の角度にも注意しましょう。
クッションの広い面を利用し、体にすき間ができないように挟んでいきます。
体重の重さを分散できるように、数か所にクッションを挟めます。
ちょうどよいクッションがない時は、バスタオルを2.3枚重ねて丸めてもクッションの代わりになります。
忘れがちなのが足首ですが、かかとにも床ずれができやすいので、かかとにクッションを挟めて少し高くすると良いです。
さいごに
拘縮があると関節の周りの皮膚や筋肉は、伸縮性を失います。
動かすと痛みを訴えることがありますから、痛みのない範囲で関節の動作を行いましょう。
無理な動作を行うと、更衣や移乗、オムツ交換で骨折することもあるので注意します。
また、拘縮があるときに注意したいのは、スキンケアとポジショニングです。
適切な介護を行うことで、少しでも負担のない生活を送っていただきましょう。
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