認知症の方が、興奮して穏やかでないことを『不穏』と言います。不穏な状態は、暴言や暴力の行動を引き起こし、夜間の不眠にもつながります。
行動の現れは、何かを知らせるサインであることを知れば、対応に繋げることができていきます。不穏の解決方法の一つとして、知っておきたい原因の見つけ方を3つ公開します!
『不穏』は気持ちを言葉で表せないサイン
下痢から『不穏』な状態が始まる
認知症の方で下痢や便秘の状態になると、突然に怒り出し混乱することがあります。
介護施設の利用者さんで下痢の症状が続いた方がいました。「あんた!何やってんの早くしなさいよ!あっちよ、あっち!」と、介護士に怒りをぶつけます。
急がせる言葉がある時は、下痢の前兆のことが多いため、すぐにトイレへ案内します。
いつもは、この対応で落ち着き始めるのですが・・・
日中に起きる変化
下痢の状態が3日ほど続きました。
介護士たちは、水分の提供を多くしたり、食事では油もの消化の悪いものを省いて代用品を出すなどして対応していました。
もうじき100歳を迎えられるこの利用者さんは、朝ゆっくり起き日中もうたた寝することが多いのです。
しかし、この2・3日は、他の利用者さんに話しかけることが多く多弁な状態でした。「あなたは、いつからここにいるの?」「ここは、いったいどうなってるんでしょうね?」「聞いてるの!」
話しかけながら、次第に興奮しはじめることもあります。
食欲にも変化があり、今まで完食できていた量の食事を残すことが増えました。また、平熱ですが時々「ゴホゥゴホゥ」と咳をしたりします。
主治医による定期の受診で、食事量が減っていること、ときどき咳があることを伝えましたが、特別な所見はありません。
不穏の原因 その可能性を考える
夜間の中途覚醒
1週間過ぎるころ、夜間の寝つきが悪かったり、夜中に起きだして眠れなくなります。
トイレに案内しても落ち着かないときは、フロアに案内することが多いのですが、その後の介護士の対応はさまざまです。
「話を聞くとよけい興奮する」といって会話を控える介護士もいれば、食事量が減っていたので、間食を提供する介護士もいます。
それぞれの対応で、2~3時間おきていると眠くなるようでした。
眠れないほどの不安
その後も夜の不眠の状態は続きました。介護士の姿を探して「誰か来て~」と大声で叫んだり、他の利用者さんの部屋に入っていったりと、行動がエスカレートしていきます。
何度お部屋に案内しても、10分も経たずに起きてしまいます。この利用者さんをお部屋に案内して、出ようとしたとき「こんな所に、わたし一人を置いていくの?」と、とても不安な様子でした。
介護士:「今、心配なことはなに?」と聞いてみると
利用者さん:「だって、わたしはどうしていいか分かんないんだもの」「一人だなんて怖くてたまんないわ!」と、半べそ状態です。
一人が怖いというのですから、お部屋で寝付くまで付き添うことにしました。
利用者さんのベッドの隅に座り寝付くのを待ちますが、一向に眠る様子はありません。
「一人が怖い」は本当の原因なのか?
「あれやって、これやって」「早く眠らないかなぁ」と、本音が心の中を横切っていきます。
利用者さんは、介護士がいるかどうか時々のぞき込んで確認しています。その時、肩を掻いているようでした。
その様子を見て思い出したのです。日中勤務の介護士が入浴のときに皮膚の異常を発見し「肩に発赤があります」という申し送りをしていたことを・・
確認してみると首から肩にかけ5㎝ほどの、少し隆起した部分が赤くなっています。以前にも似た症状があって、処方された軟膏があったので塗ってみました。
「これで、気持ちよくなりますよ」と言葉を添えて・・・
それから、身動きすることがなくなり寝入ったのです。
『不穏』の原因を3つ考えてみる
精神的な苦痛があるとき
自分の意思が尊重されなかったり、行動を強制されたときや強い口調で言われたとき、人は誰でも悲観したり反感したりするものですが、認知症の方も同じです。
認知症の方は、失うことを多く感じていますから、そうでない方より繊細なのです。感じ取りやすく、過剰に反応してしまうのだと思います。
身体的な苦痛があるとき
認知症が進行している方に、「今日の体調はいかがですか?」と質問することは、実に難しい質問なのです。
「いかがですか(どうですか)?」という質問は、状態を説明するといった複雑な質問のようなのです。ときどき、こんな質問をしてしまったとき、その利用者さんたちは実に困った表情をされると思います。
質問するときは、具体的に答えやすい方法がいいようです。ただ、そのような答えから、適切な原因を探すのは難しいかもしれません。
介護する立場にある場合は、その利用者さんの食事・排泄・入浴などから変化を見つけていきましょう。
環境に違和感があるとき
環境も重要です。光・音には過敏に反応します。物を落として大きな音がすると、利用者さんはとても敏感に反応し驚きます。
周囲の雰囲気では、人が多すぎることや知らない所など落ち着かなくなる原因となります。
居室内に常夜灯をつけたりしますが、常夜灯に異常な反応する方もいます。
まとめ
不穏という症状があったときは、何かを知らせるサインだと考えましょう。そして、原因を探るために3つの視点で要因を探してみます。
介護士が「困った」「嫌だ」と思うだけでは、解決にはなりませんから、不穏になる利用者さんのサインと原因を探れるようになりましょう。
利用者さんにとっても介護士にとっても、静かな夜を過ごしたいものです。
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