高齢になると食事や水分の摂取量が減るため、便が硬くなり出にくくなったりします。また、加齢によって筋肉が衰えると、直腸や肛門の筋肉を緩ませて排便を促すことが難しく便秘になります。このような便秘の症状を改善する方法に、お腹をマッサージしたり温める方法があります。高齢者にもやさしいマッサージやお腹の温め方を見ていきましょう。
お腹マッサージ と温罨法
お腹マッサージ 手順
高齢者の方にあお向けの状態で寝てもらい、人差し指から薬指の4本の指でおへそを中心に「の」の字を書くように、右回りでやさしく押していきます。
- 右わき腹の下の盲腸があるあたりから始め、右の肋骨の下まで進みます。
- 次におへその少し上あたりを通過しながら、左の肋骨の下まで進みます。
- そして、左の腰骨のあたりまで進みます。
- 次におへその下あたりを下に向けて押していきます。
便が停滞しやすいのは、主に左側のあたりです。
一般的に「の」の字のマッサージが多いのですが、それに加えて右から左へ手の平と4本の指を使い小刻みに揺らしながら、進む方法を行います。
「の」の字マッサージと横へ移動するマッサージを、交互に行います。
起床してトイレへ行ったときに、下腹部を押すとさらに便が移動します。
肛門の周りを触り硬くなっているようだと、便が下りてきています。
お腹に力が入りにくいようなら、肛門の周りを押してみます。
下腹部を押し肛門の周りを押す動作を繰り返すうち、排便できることが多いです。
温罨法をあわせて行う
温罨法とは、布などを使って局所を温めることです。
血管が拡張され循環がよくなります。腸の運動を改善し排便を促す効果があると言われています。
湯たんぽや温タオルをあてる方法もありますが、火傷などの危険が少ないホットパックがおススメです。レンジで温めるだけなので簡単です。
ホットパックをタオルに包んで、10分程腹部の上に置いておきます。ホットパックが直接肌に触れると火傷の可能性があるので注意しましょう。
お腹マッサージ を行う時間帯や回数
排便がない場合、トイレで腹部のマッサージを行うこともありますが、腸の動きに合わせた時間帯などにも気をつけながら行いましょう。
お腹マッサージ を行う時間帯
就寝の時ベッドに横になってから行うのが一番効果的ですが、起床の30分前にこのマッサージを行うと起床したときの排便につながりやすいです。
腸の動きは、リラックスしている副交感神経が活発なときに動きます。夜寝ているときに活発になるため、就寝のときにマッサージするのが一番効果的です。
就寝のタイミングを逃したときは、起床の前に行いましょう。寝ている状態ですと、腸全体にマッサージが行えます。
お腹マッサージ を行う回数
30回程度が効率的ですが、ご本人が嫌がるようなら無理に行うのをやめます。ゆっくり30回行うと10分以上は必要です。
お腹マッサージ の留意点
注意すること
お腹を触ってドクドクと動くところがあれば、動脈なのでその部分はマッサージしないでください。
発熱がある場合は、熱が下がってから行います。
腹痛や血便など、いつもと体調が違う場合も避けましょう。
自力で排泄すること
下剤を使う必要もありますが、まずは薬を使わない方法を考えましょう。
歩行が難しく運動量の少ない方には、車いすに乗っていただき、お散歩するのも方法です。移動するときの振動で排便につなげることもできます。
水分の摂取が難しくても、朝の1杯の水を飲めることが多いので試してみてください。少しの量でも氷を入れた冷水がおススメです。
まとめ
高齢になると食事や水分量が減り、排便が滞りやすくなります。お腹に便が溜まった状態ですと、よけい食欲もなくなり悪循環になります。
下剤に頼ってばかりいると、腸は薬に慣れてしまい薬ばかり増やすことになります。腸を動かす薬はお腹にも痛みを伴いますから、出来るだけ毎日のケアで自然に排便できるように、お手伝いしていきましょう。