高齢者の方は、排泄の間隔が短くなることを気にして、水分を摂りたがりません。また、認知症になると食欲の減退とともに、水分の摂取を嫌がられるようになります。認知症の進行を食い止めるために、必要と言われる水分。介護士が利用者さんに飲んでいただくために、工夫するポイントを見ていきます。
水分の種類で工夫する
すすめる選択肢を増やす
食事以外で水分を提供する場合の、飲み物を考えてみます。
- お茶(緑茶・番茶・ほうじ茶・昆布茶など)
- 紅茶(ハーブティー・ミルクティーなど)
- コーヒー(カフェオレ・ウインナーコーヒーなど)
- スポーツドリング・オロナミンC
- ジュース(炭酸・果汁など)
たくさんの種類がありますが、水分を摂りたがらない方におススメは、塩水です。100mlの水に一つまみの塩を混ぜるだけ。氷を入れて細いグラスで提供すると、スプーン1杯程度の量ですが、少しずつ飲むことができます。
一日に500mlがやっと摂取できていた利用者さんが、倍の量を飲むことが出来ました。
そして、あまり話すことが少なくなっていましたが、塩水をすすめるようになってから、言葉の数が増えました。「あんたきれいだね!」と介護士に言ったりするので、お褒めをいただいた介護士はニコニコです。
ミントなどを紅茶に入れると、寝つきがよくなるそうです。
水分の形状を変える
飲み込みが悪い場合に、水分を摂りたがらなくなることがあります。一般にトロミを付けて提供することが多いのですが、トロミを付けるとなお飲まなくなってしまう方もいます。
そこで、水分の形を変えて工夫をするのも方法です。
- ゼリー飲料
- 寒天類(牛乳寒天・お茶寒天・水羊羹など)
- シャーベット
- プリン・ヨーグルト・卵豆腐・果物
糖分が多めなので頻繁には出せませんが、ゼリー飲料は適量を飲んでいただくことができ、飲み口がチュウブなので飲みやすいです。
シャーベットは、牛乳などに砂糖を加え固めるだけでできるので簡単です。冷たい物は、口の中を刺激するのか覚醒状態がよくなり、吐き出さずに飲み込んでいただけます。
環境を変えて工夫する
メラミン食器だけじゃ つまらない
プラスチックで作られたメラミン食器は、壊れにくいため介護施設でも多く使われます。瀬戸物より軽いので、力のない高齢者の方に向いています。
しかし、毎日使うせいか見た目に刺激がありません。お誕生日などの行事では、オシャレな器を使うことをおすすめします。
『お茶会』と称して、抹茶碗を使ったことがありました。介護士たちが持ち寄った茶碗に、抹茶と牛乳と砂糖を入れ、茶せんでまぜて『お茶会』気分です。
いつもは一杯の牛乳を飲むのに、30分もかかる利用者さんが、あっという間に飲み干していました。
水分を出すタイミング
介護施設では、朝茶・朝食・10時・昼食・3時・夕食などに水分の提供をするところが多いと思います。
しかし、一杯のカップに150~200mlの水分を入れて出しても、なかなか飲み切れないようです。
介護士の提案で、飲めない方には少しずつ回数を増やして提供しよう。ということになりました。
台所のカウンターに、50mlのスポーツ飲料やお茶が入ったコップが並べられます。定時以外にいつでも、飲んでいただけるようにしました。
利用者さんがカウンターに来て、選んでいただきたかったのですが、どなたも取りにきません。なので、介護士が気が付いたときに、利用者さんに渡すようにしました。
ソファーに座っているときに手渡すと、コップの置き場所に困るのか、すぐに飲み切っていただけました。量が少なかったのも、良かったのでしょう。
洗い物が多くなりましたが、介護士が思いついた時に、すぐに提供できたので水分量は増えました。
認知症で水分を摂りたがらない
高齢者の必要水分量はどれくらい?
高齢者の必要と言われる水分量は、体重1Kgに対しておおよそ40mlを目安にするとよいようです。
体重40Kg の利用者さんですと、一日に1600mlが必要になり食事以外の水分摂取を1000ml以上を目安にしています。
成人の体内水分量が60%程度であるのに対し、高齢者は約50%です。体内に水分を溜めておけなくなるために、すぐに脱水症状を引き起こします。
私が訪問介護をしていた時に、介護をしていたおばあちゃんがいました。ご主人であるおじいちゃんは、とても元気な方でよく畑仕事をされていたのですが、ある日脱水症状で入院され、帰らぬ人となりました。
あの時から、高齢者の『脱水は恐ろしい』と思うようになったのです。
水分の摂取が認知症の方に必要なワケ
体内の水分量が少ないと血液がドロドロになり、脳の血管にも影響を与えます。脳血管の血流が悪いことで、脳のあちこちに炎症を起こすのです。
アミロイドβと呼ばれるたんぱく質が、排出されずにいると脳にたまったアミロイドβは脳細胞を傷つけ死滅させてしまいます。
細胞が死滅することで、脳の萎縮がはじまり認知症を発症すると言われています。
まとめ
高齢者の方は、気付かないうちに喉の渇きを感じなくなっていたり、夜間のトイレが嫌で水分を控える方もいます。
しかし、若いころと違い筋肉量が減少するとで、水分を体に溜めておくことが出来ません。
具合が悪くなった状態では、最悪の事態も起こるので注意していきましょう。