高齢になると口から唾液が漏れて、よだれを出すことが増え始めます。高齢者に多いよだれの原因には、どんなことがあるのでしょう。この頃、「よだれが出て気になる」そんな方の対応策も紹介していきます。
高齢者によだれが出る原因
高齢になると、食事をこぼしたり、よだれを出すことが増え始めます。
ご自分で気が付いて拭き取ることが多くなったり、ご家族や周囲の人が気が付いたら、その原因を考えて早めに対策を取っていきましょう。
高齢者に多いよだれが出る原因で、多いものは次のようなものです。
- 口や顔の感覚が低下している
- 舌の動きや飲み込みが低下している
- 姿勢が悪くなっている
口や顔の感覚が低下している
加齢と共に自分の歯の欠損が多くなり、歯茎だけになることもあります。
歯がないことで噛む力が弱くなり、唇やあごの感覚が低下していきます。
唇は常にやや開いた状態になり、唾液が漏れ出てしまうことや、口の中の感覚が低下していることで、溜まった唾液に気付けないために漏れ出てしまいます。
唾液の分泌量は、1日に0.5ℓ~1.5ℓといわれピークの30歳を境に減少し、高齢者では0.5ℓ程度になります。
唾液の温度は、体温に近いために口の中に溜まってもわかりづらいのです。
飲み込みの悪い方に、冷たい飲み物を出すことが多いのですが、口の中に温度の違ったものが入ると、感覚がわかりやすくなるためです。
唾液の少なくなる高齢者でも、0.5ℓ程度を飲み込んでいますが、口を閉じていられない、溜まったことがわからいなどで、よだれの原因となってしまいます。
- 唇は常にやや開いた状態で、よだれが出てしまう
- 唾液が溜まっていることに気付かない
舌の動きや飲み込みが低下している
舌は筋肉で出来ています。
筋肉は加齢と共に衰えますが、足や腰の筋力が落ちるように舌の筋力も低下します。
舌は味覚を感じる感覚機能を備えていますが、その他にも食べた物を噛みやすいように口の中で移動させる役目もあります。
唾液も同様で、意識しないでいても舌によって、唾液を喉の奥に運んでいます。
しかし、舌の筋肉が衰えることでうまく喉に送り込めず、溜まってしまった唾液がよだれとして出てしまいます。
また、高齢になることで飲み込む機能も低下し始めます。
喉につかえた感じがしたり、むせたりすることが多くなり嚥下の障害が出やすくなります。
飲み込む機能が低下することで、唾液もスムーズに飲み込めなくなってしまいます。
- 舌の筋力が低下して、唾液を喉に送り込めない
- 嚥下障害で唾液を飲み込みづらい
姿勢が悪くなっている
高齢者の姿勢の特徴は、腰が曲がり前かがみの姿勢となる円背の状態です。
背中が丸くなると、体のバランスをとるために、顎を前に突き出した姿勢になります。
唾液や食事を飲み込むためには、少し顎を引いて気管に入らないようにし飲み込みやすい姿勢にする必要がありますが、顎が前に突き出てしまうと飲み込みづらくなります。
骨盤の変形で体が左右どちらかに傾いてしまうこともあります。
骨盤が高くなっている方に体が傾きます。
体が傾き唇が閉じていない状態では、傾いた方から唾液が流れてしまいます。
その他にも、麻痺があり姿勢を維持しづらい場合や、パーキンソン病などでも姿勢を維持しづらくなります。
- 背中が丸くなり顎が前に突き出て、唾液を飲み込めない
- 骨盤のゆがみで体が傾き、よだれが出てしまう
- 麻痺などがあると姿勢を維持しづらくなる
よだれを改善する体操
よだれを改善するためには、飲み込みや舌の筋力、口の開閉をよくすることが効果的です。
毎日続けることで効果が認められるようになります。
- 飲み込みを改善する体操
- ムセを改善する体操
- 口を閉じる筋力をつける体操
- 舌の筋力をつける体操
少しずつコツコツ続けて体操をしてみましょう。
飲み込みを改善する体操
痰の絡みや飲み込みを改善する体操をしてみましょう。
- 唇をしっかり閉じます
- 舌で口の中の唾液を集めるように動かします
- 舌を上あごにつけてから
- 唾液を「ゴックン」と2回続けて飲み込みます
2回~3回を1セットとして始めてみましょう。
ムセを改善する体操
「パタカラ体操」は口の機能向上訓練で、リハビリのために多くの施設でも行われています。
- パパパパパ タタタタタ カカカカカ ラララララというように発声します
- 「パタカラ、パタカラ、パタカラ」と発音します
- 上記を1セットとして行い、少しずつ増やしていきましょう
パタカラ体操は、口の内側から顔の筋肉に力を入れることで表情筋を鍛えていきます。
鍛えられると口角が上がり、表情が明るくなります。
この他にも「あいうべー体操」もあります。
口を大きく開き「あ~い~う~べー」と発音します。
1セットを4秒ほどかけゆっくりやってみましょう。
口を閉じる筋力をつける体操
口の周りの筋肉は、唇の周りの口輪筋・頬にある大頬骨筋・顎の下のオトガイ筋などさまざまな筋肉があり、協力をして唇を動かしています。
口を大きく開ける体操や頬を動かす体操をすることで、口の閉じる筋力をつけていきましょう。
頬を動かす体操
- 右の頬を大きく膨らまし戻す
- 左の頬を大きく膨らまし戻す
- 左右の頬を同時に膨らます
- 左右の膨らんだ頬に両手を当て、「プー」と音が出るようにつぶす
上記を1セットとして繰り返します。
2回~3回を目安に少しずつ増やして、体操してみましょう。
舌の筋力をつける体操
舌の筋力をつけることで、唾液を喉に送り込むことができます。
意識して動かすことで筋力がつき、よだれを出すことを防止します。
舌を動かす体操
- 舌を思いっきり前に出して戻す
- 舌を左右に大きく動かすして戻す
- 唇をなめるように動かす
- 舌の下を上の歯茎にあて、舌打ちするように音を出す
以上を1セットとして始めます。
2回~3回を目安に少しずつ増やして、体操してみましょう。
よだれを防ぐ姿勢のサポート
よだれを出さないためには、唾液を飲み込める姿勢が必要です。
顎が突き出た状態では口が少しひらいてしまいますし、逆に顎が引きすぎても唾液を飲み込むことができません。
また、体が左右どちらかに傾くと、唾液が片方に多く溜りよだれとして出てしまいます。
ご自分で姿勢を正すことが難しい時には、クッションを傾く方に挟めておくと姿勢を正すことができます。
まとめ
高齢者のよだれの原因は
- 口や顔の感覚が低下している
- 舌の動きや飲み込みが低下している
- 姿勢が悪くなっている ことなどが大きな原因です。
口腔体操をすることで改善が見込めますから、毎日少しずつ体操を生活の中に取り入れていきましょう。
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