認知症の方を施設に入れると、認知症が一気に進むと思っていませんか?認知症を発症していなくても、高齢になると環境の変化をとても嫌がるものです。
ましてや記憶があいまいになっている認知症の方にとっては、環境の変化は混乱をまねく要因になってしまうのです。しかし、施設に入れるタイミングを間違えると、家族は疲弊してしまいます。
変化が認知症を進行させる
生きている中で、変化は労力のいるものです。
若いときでも転職したり引っ越しすると、新しい環境に慣れるまで時間が必要です。
それは、新しい人間関係であったり物理的な環境であったりします。
施設入所以外でも変化は起きる
長年連れ添った伴侶をなくしたときが、一番悲しい変化になりますが、他にもご近所付き合いしていた方との別れや、ケガで今までと同じ生活が送れなくなることも変化になります。
また、親しく付き合っていた友人が認知症になると、自分が認知症になったらどうしようと思うようなこころの変化もあります。
一人暮らしの高齢者が、もう年だからと子供たちと同居を始め、居場所の環境が変わるのも変化の一つです。
高齢になると多くの情報を処理できなくなる
携帯電話がガラケーからスマホに移行している時代にガラケーを使い続けたり、嫌だと思いながらも転職できずにいたりするのは、高齢者ばかりではありません。
不便・辛いと思いながらも変化を起こさないというのは、変化を起こすことにかなりの労力が必要だからです。
それに加えて物覚えが悪くなると、変化に対応する労力はかなりの負担になっていきます。
情報が多くその情報を理解したり覚えたりすることが負担になると、ストレスとなり認知症を発症するリスクが高くなってしまいます。
施設に入ると認知症は一気に進む?
施設に入るということは、今までの自由な生活が変化するということです。
集団生活ですから、食事の時間や就寝の時間も決められます。
入浴の日程も自分では決められないことが多いですし、勝手に施設外をお散歩しようとしてもままなりません。
多くの入所者がいても自分の居場所もなく、職員たちは行ったり来たりで話し相手にはなってくれません。
行動の範囲がなお一層狭くなり、一日の予定もわからないため考えることが少なくなります。
認知症の方はこのような中で生活を始めるわけですから、戸惑いから拒否や暴力・暴言の行動があっても自然なことなのでしょう。
ですから施設入所をすると、一気に認知症が進行してしまうように感じるものなのです。
施設に入れるタイミング
施設に入るタイミングは、とても難しいものがあります。
ご自身で望んで入所したからいいというものではなく、家族に限界を迎えた状態で入所するならいいのだということでもありません。

自分から望んで入所したはずなのに・・
病院通いが多くなったり転ぶことが多くなったりすると、そのたびに家族に迷惑をかけるからと、ご本人が望んで施設に入所した女性の方がいました。
認知症の診断はあるものの、記憶は幾分保たれています。
周囲の認知症の方を見ると症状が現れていて、「ここは、自分のいる場所ではない」と思い始めてました。
90歳には珍しいほど黒々としていた髪の色は、半年で真っ白になりました。
ふらつきがあるので一人で歩かないよう言われていましたが、自宅では自由にトイレや台所に行っていたので、同じ行動をとると転倒し骨折までしてしまいました。
大切な家族だから限界まで介護する
誰しも家族で介護をしたいと思うものですが、それは限界を迎えてしまうと共倒れになります。
脱水から身体状況が悪化した80歳の男性の方がいました。
奥様と2人暮らしです。同年齢の奥様は「私が面倒みるから」とヘルパーや訪問看護を利用してご自宅で介護をしていました。
寝たきりとなったご主人は、すぐには回復しませんでした。
1ヶ月が過ぎ半年が過ぎ、三度の食事の世話に加えオムツ交換や痰の吸引、床ずれの手当てが重なっていきます。
近隣に住む息子さんご夫婦も泊りがけで介護するようになると、家族内でケンカが絶えなくなりました。
認知症対応型のグループホーム
施設入所のタイミングやどの施設に入るかは、一概にコレ!というのは実なないのです。
それは、それぞれの環境の違いやご本人の精神的負担に関係するからです。
しかし、認知症を有する方であればやはりグループホームが良いと思います。
認知症専門のグループホームであれば、なんとか対応できないかと考えてもらえるからです。

要介護1でグループホームに入居
レビー小体型認知症の78歳の女性が、グループホームに入居しました。
会話の状態も良好で、記憶も十分保たれています。
茶碗洗いや洗濯物を干したり掃除をしたりと活動的な方ですが、入居当時は夢にうなされ夜間に大声をだしたり、夢遊病のように中庭に出ていくことがありました。
こだわりが強く嫌いな職員が出したお茶に「なんか変な味がする」といって、ことごとく不満を言うこともありました。
グループホームは認知症の症状に対応できる職員がいます。
外出の機会をもうけたり、折り紙や塗り絵などの創作活動などの工夫をすることによって症状が緩和し、夢にうなされたり強いこだわりを持つことが減りました。
お友達が面会に来ていた時に「ここに来てよかったよ」と、お友達に話していたそうです。
髪の毛が黒くなる
病院からグループホームに入居した80歳の女性がいます。
アルツハイマー型認知症で、症状はかなり進行していました。拒否が強く歯磨きさえ行えない状態です。
髪は内側にいくらか黒いものが見える程度で抜け毛がひどく、全体的に白っぽく見えます。
拒否が強く入浴も行えないためか、足の裏はまるで魚のうろこの様に皮膚が何枚も重なっていました。脚はやや屈曲して拘縮しています。
入居してすぐのころは寝たきりの状態でしたが、離床からはじめ車椅子から椅子への移乗で立っていただくようにアプローチしました。
屈曲した脚は真っすぐには伸びませんが、共に掛け声をかけるとご自分でもなんとか立とうとされていました。
9ケ月後、浴槽に入り入浴することができました。
魚のうろこのようだった足の裏はツルツルです。
驚いたのは、日に日に髪の色が黒くなっていったことです。
もちろん真っ黒にはなりませんが、抜け毛もなくなり後頭部が黒くなってきています。
まとめ
施設入所は認知症を一気に進行させるかもしれません。
しかし、認知症そのものは、進行性の症状だと言われています。
ご家族が頑張って介護をしても、苛立ちやケンカの火種になってしまっては、当のご本人も悲しくなると思います。
介護職員たちは、改善できるものは改善させたいと思い関わっています。
いざという時のためにも、施設見学をしておくとと良いでしょう。
そして、介護者のストレスが溜まってしまう前に検討するのがタイミングなのだと思います。