認知症の行動・心理症状である攻撃的な行動は、介護者にとって心理的にも負担となる症状です。しかし、ご本人にとって何かしらの理由が潜んでいるものです。ご本人の気持ちを理解することが大切ですが、具体的な対応はどのように行ったらよいのでしょうか。認知症の攻撃的な行動があるときの、具体的な対応をご紹介します。
認知症の対応 攻撃的な行動のあるとき
攻撃的な行動があるときの対応
攻撃的な行動があるときの具体的対応は、次のようなことです。
- 距離をとる
- 介護者を変える
- 大切な存在だと知らせる
- 孤独にさせない
- 行動を観察する
距離をとる
一番適切な対応
暴言や暴力で対応に困ったときは、距離をとることが一番適切です。
認知症の方が攻撃的になる原因は、「自分は今、攻撃されている」と感じている時や、苛立っていることが多いからです。
攻撃されているときに、攻撃をすることで自分の身を守ろうとしています。
また、「なぜか上手くいかない」「どうしてよいのか分からない」と気持ちが急いているときに、あれこれうるさく指示されると気持ちが爆発してしまいます。
距離をおいて時間を空けることで、自分なりに気持ちを整理することができます。
介護者にとっても一呼吸おくことで、攻撃な行動を受けた気持ちを落ち着かせることができます。
介護者を変える
転倒などの危険があるとき
排泄や入浴または移動の途中で、攻撃的な行動があった時に転倒などの危険がある場合は、一人にすることができません。
そのような時は、介護者を変えてみましょう。
興奮した状態で同じ介護者がいくら対応しても、認知症の方は同じ思いを引きずってしまいます。
介護者を変えることで「助けが来た」と、感情を入れ替えることができます。
介護者にとっては理不尽な思いをしますが、状況を悪化させないためには必要なことです。
大切な存在だと知らせる
ぞんざいに扱われていると思うとき
扱い等が丁寧でなく、なげやりで乱暴に扱われている、とご本人が感じてしまうこともあります。
介護者の態度などに反発して、攻撃的になっているかもしれません。
そのような時は、言い方を丁寧にしたり、笑顔で対応してみましょう。
攻撃的な行動や言葉は、「自分を大切にして欲しい」という気持ちが、人一倍強いことを意味しています。
介護者にとってそのようなつもりはなくても、急いでいたり億劫に思うときは、自然と言葉や表情に出ているかもしれません。
孤独にさせない
一人でいる時間が長くなる
一人でいると、「今の状況が分からない」という思いを増幅させ不安なことばかり考えることにもなります。
定期的に声をかける・誰かと一緒にいるなど、孤独な時間を減らしていきましょう。
不安になると悪いことばかり考えますから、「どうしたらよい」「このままではいけない」と苛立つことになってしまいます。
行動を観察する
人によっては、暴言や暴力が決まったパターンで現れる
トイレに行きたくてソワソワしていたり、眠気のあるときに声をかけられて驚く、やりたくないことを強制されるなどの決まったパターンで症状がでます。
攻撃的な行動があるときは、どのような時なのかを観察することです。
行動のパターンが分かれば、その状況をつくらない工夫をすることができます。
定期的にトイレに案内する、眠気のあるときは声をかけない、嫌がることは勧めないなどの対応をすることで、症状が少なくなります。
認知症の攻撃的な行動 強める対応
行動で対抗する
叩く・つねるなどの攻撃的な行動があると、抑えつけたりすることもあると思います。
下肢筋力が弱くなっても、手や腕の力は維持できることが多く、振り下ろした腕で介護者が骨折することもあります。
介護者の身を守るためにも、仕方のない場合もありますが、抑えつける対応は認知症の方の症状をいっそう悪化させてしまいます。
そうならないためにも、事前の対応が重要になります。
攻撃的な行動に潜む心理状態をつかんで、対応できれば介護者にとっても悲しい思いをしなくて済みます。
理詰めで説得しようとする
怒鳴る・叫ぶなどの暴言がある場合は、理由を説明して説得しようとすることもあります。
夜中に叫んだ場合、「皆さん眠っていますから」と説明しても、ご本人が夜であることを認識できなければ、納得はしていただけず説明を繰り返すことになり、かえって感情を高ぶらせてしまいます。
そのような時は、何かできることがないかを聞くなどして、気を紛らわせるように対応していきましょう。
攻撃的なときのコミュニケーション
わかりやすく伝える
高齢の方は難聴の方も多く、聞き取りづらかったり、正しく聞き取れない場合もあります。
ですから、短い言葉でゆっくりハッキリと伝えていきましょう。
高齢者に聞き取りにくい音は、パ行、タ行、カ行、サ行だと言われています。
「パンツ」が「タンス」に聞こえると、言葉はつながらなくなります。
一旦は受け入れてみる
夜中に起きだして、ゴソゴソ何かをはじめてしまったときは、眠るように伝えるわけですが、「眠くありません!」と答えることもあるでしょう。
眠くないときに、「でも夜中なんだから」と否定したコミュニケーションをとっても、返ってくるのは攻撃的な行動や言葉ばかりです。
「でも」「だけど」といった否定的な言葉は、自分を受け入れてもらえないという感情につながり、苛立ちはじめます。
「眠くないなら、お茶でも飲みますか」と話しかけ、一旦はその言葉を受け入れて、様子を見守りましょう。
自尊心を傷つけない
「わかる?」「できる?」という言葉は、自尊心を傷つけやすい言葉です。
このような言葉を連続すると、「人のことバカにして!」という気持ちを抱かせてしまします。
未経験のことが多い幼児に対して、「わかる?」「できる?」は確認の言葉にもなりますが、人生の経験を積んだ高齢者は、自尊心を傷つけられたような思いをしてしまいます。
「お願いします。大丈夫ですか?」と聞くことで、確認がとれますから言葉を変えて伝えることも必要です。
さいごに
認知症で攻撃的な行動のあるときの、具体的対応は
「距離をとる」「介護者を変える」「大切な存在だと知らせる」「孤独にさせない」「行動を観察する」ことです。
ついつい介護者も感情的になってしまいがちですが、対応で改善することもできますので、取り組んでいきましょう。
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