高齢になると、皮膚の角質層に水分を保つ機能が低下し、乾燥した状態になります。皮膚が乾燥すると、白いフケのようなものが生じかゆみを伴います。この症状は、老人性乾皮症といい秋から冬にかけて多い症状です。高齢者の皮膚乾燥のトラブルの改善ポイントやかゆみ対策、乾燥皮膚の原因についてご紹介します。
高齢者の皮膚の乾燥
老人性乾皮症
高齢者の9割の方が、老人性乾皮症といわれています。
老人性乾皮症の症状
皮膚がカサカサとして粉をふいたようになります。
衣類の摩擦などのちょっとした刺激に反応し、皮膚に赤みがでたり、かゆみが起こります。
かゆみが治まらず、さらにその部位を掻くと炎症を起こしてしまいます。
よく見られる部位
- 腰まわり
- 太もも
- すね
症状の経過
老人性乾皮症は、かゆみを伴うため、ついつい掻いてしまいますが、掻き続けると炎症を起こしてしまい、次のような症状へと悪化させてしまいます。
老人性乾皮症 皮膚の角質層に水分を保つ機能が低下し乾燥
↓
皮膚掻痒症 外部刺激に対して敏感に反応し、かゆみが生じる
↓
皮脂欠乏性湿疹 頻繁に掻き続け、炎症を伴う湿疹ができる
↓
貨幣状湿疹 円形の隆起した湿疹を、かさぶたなどが覆い非常に強いかゆみを伴う
高齢者の皮膚乾燥 改善ポイント
皮膚が乾燥してかゆみの症状がでると、気になって落ち着かなくなります。皮膚乾燥の改善のポイントを確認して、実践してみましょう。
- 皮膚乾燥を守る入浴方法
- 湿度で乾燥対策
- かゆみ対策
皮膚乾燥を守る 入浴方法
皮膚を乾燥させてしまう入浴には、次のことに気をつけましょう。
- 熱いお湯での入浴をさける
- 長時間や頻回な入浴をさける
- 保湿成分の入った入浴剤を選ぶ
- 弱酸性の洗浄剤を選ぶ
1.熱いお湯での入浴をさける
お風呂のお湯の適温は38度~40度。
高齢の方は熱いお湯を好みますが、40度を超えてしまうと角質層を傷め、保湿成分の皮脂や角質層のセラミドが流出してしまいます。
2.長時間や頻回な入浴は避ける
入浴してから5分を過ぎると、皮膚の水分は減少し、15分後には入浴前より乾燥が進んでしまいます。
毎日の入浴は気持ちの良いものですが、高齢になり皮膚の乾燥が気になる場合は、入浴を週に2回~3回程度に留めましょう。
3.保湿成分の入った入浴剤を選ぶ
入浴剤には、保湿系のものと発汗作用のものがあります。
皮膚を柔らかくしっとりさせる保湿系の入浴剤を選びましょう。
保湿系の入浴剤に含まれる成分には、「セラミド」「ヒアルロン酸」「スクワラン」「海藻エキス」などがあります。
4.弱酸性の洗浄剤を選ぶ
皮膚は弱酸性でできています。同じ性質の弱酸性のものは中和できないため、洗浄力が落ちますが、皮膚に刺激が少なく乾燥にやさしい洗剤となります。
入浴のときのボディーソープや食器洗いの洗剤にも、弱酸性のものを選びましょう。
湿度で乾燥対策
生活する上でベストな湿度は40%~60%と言われています。
湿度が40%以下になると、皮膚や喉の渇きを感じはじめます。
湿度を保つ対策として、次のようなことを試してみましょう。
- 濡れタオルで湿度を保つ
- 窓を開ける
- やかんで保湿
濡れタオルで湿度を保つ
加湿器を購入する前に試したいのが、濡れタオルや洗濯物を干す方法です。
干すものが多ければ加湿につながりますが、多すぎて湿度が多くならないように注意しましょう。
窓を開ける
空気の乾燥は、窓を開けて外気を取り入れることで改善できます。
冬場の寒いときでも、5分程で良いので定期的に外気を取り入れて湿度を保ちましょう。
やかんで保湿
冬場に、反射式のストーブを使っているなら、やかんをかけておきましょう。エアコンで過ごされているなら、やかんでお湯を沸かし蓋をあけておくと効果があります。
湿度が高くなると、カビの発生につながりますから、湿度計を用意して調節してみましょう。
かゆみ対策
乾燥によるかゆみで、掻きつづけると炎症を起こしてしまいます。
そうならないための、かゆみ対策は次のようなものです。
- 食事で皮膚の代謝をよくする
- 肌着を木綿の素材にする
- ストレスを避ける
食事で皮膚の代謝をよくする
食事面で、ビタミン類を摂ることが大切です。
ビタミン類は、皮膚の代謝を促進し潤いを保つ働きがあります。
特にビタミンAとCは、効果が高く積極的に摂っていきましょう。
ビタミンA:レバー、うなぎ、人参、かぼちゃなどの緑黄色野菜
ビタミンC:キウイ、イチゴ、パプリカ、さつま芋など
ナッツ類やアボカドなどの、ビタミンEを含む食品も代謝を高めます。
肌着を木綿の素材にする
皮膚に直接触れる肌着は、木綿の素材を着用しましょう。
綿100%の素材は、肌に触れると少しかたく感じますが、その分摩擦が少なくかゆみを抑えることができます。
ストレスを避ける
乾燥した皮膚のストレスには、紫外線などの外的要因と精神的な内的要因に分かれます。
外的要因 過度な暖房による空調や紫外線は直接皮膚に影響を与えます。
内的要因 精神的ストレスは、睡眠不足などで代謝を悪化させてしまいます。
ストレスのない環境を整えることも、改善につながります。
皮膚乾燥の原因
表皮層の変化
表皮細胞は約28日間で表皮の一番外側に届き、その後約14日で垢となり剥がれます。
高齢になると、このサイクルが遅くなり細胞分裂が減少することで、表皮が薄くなります。
真皮層の変化
35歳ごろから徐々に女性ホルモンの分泌が減っていきます。
それにより、肌の弾力を保っている真皮層の成分が減少し、真皮層が薄くなります。
皮脂分泌の変化
皮脂は、毛穴の内部にある皮脂腺から肌の表面に流れます。
表面に流れた皮脂は、薄い膜になって広がり水分の蒸発を防ぎます。
表皮層や真皮層の変化で、皮膚が薄くなると、皮脂を分泌する力が弱くなります。
すると、角質層は潤いをなくし皮膚は乾燥をはじめます。
バリア機能が低下
乾燥してきめが粗くなった皮膚は、バリア機能が低下し外部からの刺激を受けやすくなります。
紫外線、気温の変化、細菌、化学物質などの刺激を受けることによって、湿疹やかゆみの症状が現れます。
まとめ
高齢者の皮膚の乾燥は、細胞分裂や女性ホルモンの減少で、角質層が薄くなり乾燥します。
乾燥した皮膚を掻き続けると炎症を起こしますので、入浴方法や湿度を保って悪化を防ぎましょう。
また、かゆみ対策には、ビタミンの多い食事や、刺激の少ない綿の素材の肌着を選び、皮膚をストレスなく過ごせる環境を作ることが大切です。
高齢と共に訪れる皮膚の乾燥について、ポイントをつかんで改善や予防につなげていきましょう。
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