足のむくみで、高齢者の方が「足が痛い」と訴えたり、ご家族や周囲の方が「足の甲が腫れて気になる」と思うことがありますね。足がむくむと、ジンジンとした痛みがあり、歩くこともままなりません。高齢者の方の足の甲にむくみがあるときの原因や、ご自宅で出来る対策方法についてご紹介します。
高齢者のむくみ
足のむくみは、足に停滞した血液が循環しないために起こる生活習慣によるものと、病気が原因でおこるものがあり原因はさまざまです。
むくみの原因を知り解消法を実践したり、予防できることを生活に取り入れていきましょう。
むくみは、病気や生活習慣でおきる
むくみには、病気が原因で起こる慢性のものと、生活習慣による一過性のものとがあります。
慢性のむくみ
- 全身のむくみ 心臓、肝臓、腎臓、甲状腺などの病気
- 片足だけのむくみ 深部静脈血栓症、リンパ浮腫、下肢静脈瘤など
高齢者の場合、年齢による臓器の機能低下があり薬の服用も多いため、薬剤の影響も考えられます。
また、高齢の場合で急激なむくみの他に、体重の増加や息切れなどの症状があるときは、緊急を要する病気の可能性があるかもしれません。
はじめに受診して、足の甲のむくみに病気の原因がないかを確認しましょう。
一過性のむくみ
- 長時間の同じ姿勢によっておこる
- 塩分で水分を摂りすぎ、糖分で水分を溜める
- 加齢による基礎体温の低下
- 身体的・精神的なストレス など
一晩寝て足の甲のむくみが改善するようなら、生活習慣によるものが多いものです。
しかし、同じ生活を繰り返すことで、足の甲がすぐにむくんでしまうようなときは、生活習慣を変えていく必要があります。
生活習慣による足の甲のむくみ
長時間の同じ姿勢によっておこる
座っていることが多い高齢者にとって、ふくらはぎを動かすことが少なくなり、足のむくみに繋がります。
そのような時の対処法には、次のようなものがあります。
- 立つ機会を増やす
- 足を高くする
- 体操をする
- 土踏まずを刺激する
1. 立つ機会を増やす
ふくらはぎのポンプ機能を高めるために、立つ機会を増やし歩いてみましょう。
食器を片付ける、カーテンを開ける、物を取るなど、ご家族がいるとどうしても頼んでしまいがちですが、「歩く機会を増やすため」と思って行っていきましょう。
2. 体操をする
椅子に腰かけた状態で出来る体操をしてみましょう。
- 片方のふくらはぎを、反対の膝に乗せます(足を組んだ状態)
- 膝に乗せた足の、足先を前後に大きく上げ下げします
- 5回ほど行ったら、反対も同様に行います
思いついたら一日に何回か行いましょう。
痛みのないように行って下さい。
3. 土踏まずを刺激する
足の裏には、静脈の血が溜まりやすい部分があります。
青竹や足ふみマッサージの用具を使って、足裏を刺激しましょう。
土踏まずを刺激することで、足のポンプ機能を助けます。
足ふみマッサージの用具は、100均でも購入できます。
4. 足を高くする
動く動作が大変な方は、足を高くして過ごしましょう。
足は心臓の高さと同じくらいが良いのですが、それでは寝たきりになってしまうので、膝と同じ高さになるようにしてみましょう。
椅子に座って過ごすことが多いときは、スツールに足を乗せて過ごすとむくみに効果があります。
塩分で水分を摂りすぎ、糖分で水分を溜める
高齢になると味覚に変化があらわれ、しょっぱいものや甘いものを欲しがるようになります。
塩分を過剰に摂取すると、血中の塩分濃度が高くなり、濃度を下げようと体が水分を欲しがるようになります。
また、糖分には水を溜め込むという性質があります。
塩分の摂り過ぎで水をたくさん飲んだり、甘いものを多く食べることで、体内に水分が溜まってしまいます。
そして、そのような水分の摂りすぎが足の甲のむくみに繋がっていきます。
改善するためには、しょぱいものや甘いものを控える必要がありますが、その他にカリウムを含む食品を摂ると改善が見込めます。
しょっぱいものを多く食べたとき
カリウムは塩分であるナトリウムを、運ぶ役目を持っています。
塩分を摂り過ぎたときは、カリウムの多い食品を摂って塩分を体外に排出しましょう。
カリウムの多い食品
カリウムを多く含む食品は、野菜と果物です。
その他には、海藻類やナッツ類、芋類などがあります。
カリウムは、水に溶けやすいという性質があります。
煮たり茹でたりすると、水に溶け出て成分が少なくなってしまいます。
効率的に摂るためには、生の状態で食べることをおススメします。
腎臓の病気のある方
腎臓の病気のある方で、食事制限のある方では、カリウムの制限のある場合もありますので、栄養指導を受けながら食事療法を行ってください。
加齢による基礎体温の低下
高齢者の方は、基礎体温の低い方が多いものです。
50歳以下の方の平均体温が36.89度前後なのに対し、65歳以上の方ではその平均体温は36.66度前後で、0.2度以上低くなっていきます。
施設に入所している方にも、基礎体温の低い方が多く35度代が平熱という方もいるほどです。
冷え性は、血の巡りを悪くして水分の巡りも悪くしてしまいます。
寒い時期の冷え対策は、とても大切ですので改善していきましょう。
足の冷え性を改善する方法には、次のようなものがあります。
- 入浴や足浴
- 衣類を重ね着する
- フットウォーマーを使う
1. 入浴や足浴
入浴は40度程度の湯温で、5分~10分位が目安です。
湯温が高かったり長湯をすると、高齢者にありがちなかゆみを伴ってしまいます。
足浴は、40度前後のお湯をバケツや専用の容器に入れ、10分程度足を入れて温めます。
寒い時期は、少しずつお湯を足していくと湯温を下げずにすみます。
2.衣類を重ね着する
衣類の重ね着は、カーディガンなどの上着で行うことが多いのですが、高齢者の方にはズボン下の肌着を1枚増やすと、保温性が高まります。
かゆみのある方には、綿100%の素材がおススメです。
3.フットウォーマーを使う
足を温めるための用具で、両足を揃えて袋状の保温具に足を入れて温めます。
ソックスタイプなど様々な種類があります。
介護施設などでは、フットウォーマーにホッカイロを入れて使っています。
足の血行が良くなり、長い時間使用できるのでおススメです。
身体的・精神的な高齢者のストレス
高齢者のストレスには、若年者とは違うストレスの変化があります。
- 退職による生活の変化のストレス
- 家族の病気や介護によるストレス
- 配偶者や親近者との死別
- 眠りが浅い
- 判断力が落ちる
- 物事が面倒になる など
『ストレスホルモン』で体内に水分が溜まる
体に大きなストレスがかかると、『コルチゾール』というホルモンが増えます。
このホルモンは、俗にストレスホルモンと呼ばれ、このホルモンが多くなると水分の排出がスムーズに行われず、体内に水分を溜め込んでしまいます。
また、『コルチゾール』は、筋肉を構成するタンパク質に影響し、コルチゾールが増えてしまうと筋肉を落としてしまいます。
筋肉が減ると、足の筋肉も減少しますから、ポンプの機能が果たせず、足のむくみに繋がっていきます。
高齢者のストレスは、「自分の思ったように出来ない」ことがストレスに繋がりやすくなります。
家族や周囲の人が、焦らせたり急がせたりすることがないよう、「遅れてもいい」「できなくてもいい」という心構えで接していきましょう。
足のむくみは静脈で起こる
心臓から送られる血液は動脈を通って、全身の毛細血管まで運ばれます。
毛細血管まで運ばれた血液は、静脈を通って心臓に戻る仕組みになっています。
心臓→動脈→毛細血管→静脈→心臓
足のむくみの原因
全身に張り巡らされた毛細血管ですが、心臓から遠く離れた足の毛細血管まで行きついた血液が、心臓に戻るのは大変!
重力に逆らって心臓に戻らなければなりません。
足の毛細血管まで行きついた血液。
その血液は、毛細血管から今度は静脈に運ばれます。
静脈に運ばれた血管は、心臓に戻りますが、重力があって戻りづらくなります。
その送り出す力となるのが、ふくらはぎの筋肉です。
ふくらはぎを動かすことによって、ポンプとしての役割を行い、心臓まで送り届けます。
静脈には、弁がついていて逆流を防いでくれます。
血管の壁には、細かい穴があり水分が染み出ています。
染み出た水分の一部は、リンパ液としてリンパ管に吸収されます。
足の静脈で、血液が滞ると水分が血管外に流れやすくなります。
すると、リンパ管では吸収しきれない水分が、細胞間に流れ足がむくみます。
- 足の静脈で、血液が戻りづらい
- 血管の穴から、水分が漏れ出る
- リンパ管で吸収できない水分がある
- 細胞間に流れる細胞間液(余分な水分)となる
- 足のむくみになる
むくみが起きる仕組みを知ることで、なぜ温めたり運動したりするのかを理解できます。
さいごに
高齢者の方の足の甲にむくみがあると、ご本人はもとより周囲の方も気になりますね。
高齢者の方の足の甲に、むくみがあるときは、一度受診して原因が病気によるものなのかを確かめましょう。
むくみに繋がる病気が見つからないときは、生活習慣を変えることで改善が見込めます。
1.『長時間の同じ姿勢によっておこる』のときは、体を動かす。
2.『塩分で水分を摂りすぎ、糖分で水分を溜める』のときは、カリウムを摂る。
3. 『加齢による基礎体温の低下』のときは、体を温める。
4.『身体的・精神的なストレス』のときは、リラックスして過ごす。
様々な原因で起こる場合の対処法を試してみて、むくみを軽減していきましょう。
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