ご家族に 「認知症じゃないかしら?」と思うとき、確かめてみたいけど、いきなり病院に連れて行けないし・・と思うことはありませんか?長谷川式の検査で、認知症の疑いを調べることができます。長谷川式のやり方を覚えて認知症をサラ~っと確かめてみる方法をご紹介します。
おじいちゃん、この頃物忘れが多いけど、
認知症じゃないかしら。
確かめてみたけど、いきなり病院に連れて行けないし・・
認知症の疑いがあるかを調べる、
長谷川式っていうのがあるらしいわよ ・・
自宅で確かめることが
出来たらいいんだけど・・・
こんな疑問にお答えします。
長谷川式で認知症を確かめてみる
認知症のことがよくわからないし、医療知識もないし・・
ご家族が長谷川式で認知症を確かめることが出来るのか、ちょっと疑問のあるところです。
この長谷川式はスクリーニングといって、ふるい分けをする検査です。 認知症の疑いがあるのかを、ふるい分けるために使います。 質問の項目や聞き取るときの注意点を理解すると、自宅でも行うことが出来るんです。 |
認知症の診断をするわけではないので、
認知症の心配があるときに迷ってモンモンとしているより、
試してみるとよいですよ。
病院で緊張しながら検査を受けると、思い出せないこともありますからね。
改訂長谷川式簡易知能評価スケール
認知症の長谷川式は、1974年に長谷川和夫先生が開発して、
1991年に加藤伸司先生たちによって改訂されて現在も広く利用されています。
それが、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)です。
記事の最後に、加藤伸司先生の本をご紹介しますね。
何を調べて、認知症の疑いを確かめるのかしら?
認知機能を調べるんです。
記憶力だけじゃないんですよ。
認知機能って何かしら?
わかるようで、よく分からないわ?
認知機能というのは、生活する上で必要な知的能力のことです。
記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断とかですね。
長谷川式の検査では
質問されたことを、考えて理解して覚えます。 計算するときには、身につけた学習内容で判断して計算します。 質問された答えは、口頭で答えますから言葉の使い方も必要です。 |
なので検査の中には、覚えることや計算することなんかもあるわけです。
具体的に質問の内容ってどんなものなの?
質問する項目は、9項目だけなんですよ!
ザックリとこんな感じです。
- 本人の年齢
- 今日の年月日と曜日
- 今いる場所
- 言葉を覚える(桜・猫・電車)
- 計算(100-7=? -7=?)
- 聞いた数字を逆に言う(6・8・2→2・8・6)
- 少し前に覚えた言葉を言う(桜・猫・電車)
- 実際の物を見せて、隠した後に思い出す(5つ)
- 野菜の名前を言う(言えるだけ)
質問するときに使うもの
- 関連性のない物を5つ
- 質問用紙とペン
これだけです。
質問するために、関連性のない物品も使います。
ペンとノートでは、関連性があるのでペンと時計などの組み合わせです。
何分間で検査するの?
5分~10分程度です。時間に決まりはありません。
加藤伸司先生の記述では、
すぐに終わるようにするのではなく、なるべく本人に思い出してもらうように少し待ってみるくらいの余裕をもって検査を行う。
改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の使い方 より
ということなので、焦らずゆっくりやってみましょう。
検査結果を確かめる
検査を終えたら採点してみましょう。
9項目の質問で、満点は30点です。
20点以下が「認知症の疑いがある」と確かめることができます。
長谷川式のやり方には、質問の方法やヒントの出し方にコツがあります。
始める前に、質問するときのポイントを見てから始めましょう。
長谷川式 やり方のコツ
質問の仕方やヒントの出し方に、
どんなコツがいるのかしら?
何を確かめたいかで質問が用意されています。
質問の目的を知ることで、
気を付けるポイントが分かるんです。
見当識<今の状況>を確かめる
最初の3つの質問は、「今の状況を理解できているか」を確かめます。
- 本人の年齢
- 今日の年月日と曜日
- 今いる場所
1.本人の年齢
生年月日ではなく年齢を質問するのは、「今の年齢を理解しているか」と言うことなんです。
年齢は、数え年で覚える方もいるので2つの年齢の誤差は正解とされています。
2.今日の年月日と曜日
年月日と曜日は、曜日から聞いても月日や年から聞いても間違いではありません。
曜日・月日・年の順で聞くと答えやすいです。
曜日・月・日・年で各1問ずつとします。(4問)
採点 正解各1点 不正解0点 |
3.今いる場所
今の場所は、自宅や病院などの返答で正解です。
答えられないときは、「自宅?病院?施設?」とヒントを出してみましょう。
採点 ヒントなし正解2点 ヒントあり正解1点 不正解0点 |
今の状況を分かっているか調べるのね!
<作業の記憶>を確かめる
言葉や数を覚えてもらい、「記憶する作業ができるか」を確かめます。
4.言葉を覚える(桜・猫・電車)
6.聞いた数字を逆に言う
(6・8・2→2・8・6)(3・5・2・9→9・2・5・3)
関連のない言葉は連想しづらいので、覚える作業が必要になるんですね。
4.言葉を覚える
(桜・猫・電車)の他に、(梅・犬・自動車)の3つも使えます。
この2つの組み合わせは、(植物・動物・乗り物)で連想しやすいものをデーターで確かめています。
後でまた同じ質問をするので、思いだせないときは採点した後に、また出題をしてみます。
3回繰り返しても2つしか覚えられないときは、
後で同じ質問をするとき(7.少し前に覚えた言葉を言う)に
「さっき覚えた2つの言葉があったよね。」と
覚えられた2つについて質問します。
桜・猫・電車で各1問ずつとします。(3問)
採点 正解各1点 不正解0点 |
桜・猫・電車の言葉は、
後でまた思い出してもらうことを
伝えておきましょう。
6.聞いた数字を逆に言う
数字を逆に言う質問は、質問前に「1.2.3を逆に言うと?」というように、練習してからが良いようです。
- (6・8・2)
- (3・5・2・9)
上記の数字を一つずつ質問して、逆の順で答えてもらいます。
はじめの(6・8・2)で答えられないときは、
(3・5・2・9)の質問は行いません。
(6・8・2)(3・5・2・9)で各1問ずつとします。(2問)
採点 正解各1点 不正解0点 |
はじめに「1.2.3」で練習するといいのね。
<判断力や遂行力>を確かめる
計算は「数字を識別する判断力」と「最後まで作業を行うという遂行力」があるかを確かめます。
5.計算(100-7=? ?-7=?)
長谷川式は、「100-7は?」という質問をした後、
「それから、また7を引くと?」と質問を繰り返します。
「93-7=?」としないのは、「93」という数字(少し前の記憶)を確かめるためです。
はじめの「100-7=?」で答えられないときは、質問は1つだけにします。
(100-7=?)(?-7=?)の2問とします。
採点 正解各1点 不正解0点 |
2回目の計算は、
記憶をたどる作業が必要ですね!
<記憶できているか>を確かめる
覚えたことを「少し時間をあけて覚えているか」を確かめます。
7.少し前に覚えた言葉を言う(桜・猫・電車)
すぐに答えられないときは、「花があったよね」とヒントを出します。
桜・猫・電車で各1問ずつとします。(3問)
採点 ヒントなし正解各2点 ヒントあり正解各1点 不正解0点 |
花・動物・乗り物ってヒントをだすのね!
<物の名前>を確かめる
実際に目の前に物を並べて「物の名前を覚えているか」を確かめます。
8.実際の物を見せて、隠した後に思い出す(5つ)
関連性のない5つの物を、1つずつ名前を言って並べます。
「これはペンだね」と言いながら並べ、並べ終わったら「これは?」と1つずつ確認します。
確認が終わったら、全ての物を隠します。
思い出すときには、順番は違っても良いことを説明しておきましょう。
採点 正解のもの1つにつき1点 (5問) |
<言葉が出てくるか>を確かめる
覚えている言葉を記憶から取り出して、
「スムーズに言葉にして出せるか」を確かめます。
9.野菜の名前を言う(言えるだけ)
平均でスラスラと出る野菜の数は、認知症の高齢者の方で5個、
認知症でない高齢者の方で10個という調査結果を元に作られています。
野菜の名前は、男女差や地域差がない物の名前として採用されています。
同じ野菜を答えたとき、「さっき言ったよね」と言うと言葉をさえぎってしまうので、
書き写しておいて採点から外します。
採点は、6個目から採点します。
採点 0~5個の場合0点 6個で1点 7個で2点 8個で3点 9個で4点 10個以上で5点 |
検査結果を確かめる
検査を終えたら採点してみましょう。
9項目の質問で、満点は30点です。
20点以下が「認知症の疑いがある」と確かめることができます。
※青い文字をクリックすると、確認方法に戻ります。
問題数 | ヒント有無 | ヒントなし | ヒントあり | 合計 | |
1.本人の年齢 | 1問 | なし | 1点 | – | 1点 |
2.今日の年月日と曜日 | 4問 | なし | 各1点 | – | 4点 |
3.今いる場所 | 1問 | あり | 2点 | 1点 | 2点 |
4.言葉を覚える | 3問 | なし | 各1点 | – | 3点 |
5.計算 | 2問 | なし | 各1点 | – | 2点 |
6.聞いた数字を逆に言う | 2問 | なし | 各1点 | – | 2点 |
7.少し前に覚えた言葉 | 3問 | あり | 各2点 | 各1点 | 6点 |
8.実際の物を思い出す | 5問 | なし | 各1点 | – | 5点 |
9.野菜の名前を言う(言えるだけ) | 5問以上 | なし | 6個で1点 7個で2点 8個で3点 9個で4点 10個以上5点 | – | 5点 |
30点 |
確認するときに改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)の表を使うと便利です。
長谷川式のやり方で緊張しない方法
でも認知症の検査だから、
やっぱり病院でやってもらった方が
いいんじゃないかしら・・
そんなことありませんよ。
適任者はご家族や、
いつも接している介護士かもしれませんよ。
なぜなら、リラックスしていつもの状態で検査できるからです。
認知症検査は、今やインターネットで検索すると、
簡単にセルフチェックを行うことができます。
やってみると分かりますが、相手が機械でもとても緊張するんです。
いつもの会話の延長で、「クイズでもやってみる?」なんて話して、
検査するのが一番適切な結果が出るんじゃないでしょうか。
認知症の長谷川式は、認知症の診断をするものではありません。
「認症の疑い」があるのかを振り分ける検査なんです。
21点以上なのに何か変なとき
おじいちゃん30点(満点)だったけど、
やっぱり前と様子が違うの?
どうしたらいいかしら?
いつもと違う様子があるときは、
主治医に相談してみましょう。
長谷川式で検査して21点~30点(満点)なのに、
「どうもいつもと様子が違う」ということもあります。
そんな時は、主治医に相談して専門医を紹介してもらいましょう。
実例ですが、長谷川式で満点だったのに、
他の検査を受けて認知症の診断を受けた方もいます。
道を間違えることが多くなって
「いつもと違う」という変化にご家族が気付いて、
他の検査で認知症が診断されています。
認知機能には、空間認知というものがあり、
物と物との距離や位置関係を知る機能があります。
「道を間違える」「字がきれいに書けなくなる」などは、
空間認知の低下が考えられるんですね。
認知症の検査には、MMSEという検査など
いくつかの検査がありますので、医師に相談してみましょう。
まとめ
認知症の検査は、場合によってはご本人の気持ちをとても傷つけることにもなります。
検査をするときには、「おもしろいクイズ見つけたよ~」と
リラックスできる声かけをしながら行うと、
不安にならずに行えますよ。
長谷川式の検査項目
- 本人の年齢
- 今日の年月日と曜日
- 今いる場所
- 言葉を覚える(桜・猫・電車)
- 計算(100-7=? -7=?)
- 聞いた数字を逆に言う(6・8・2→2・8・6)
- 少し前に覚えた言葉を言う(桜・猫・電車)
- 実際の物を見せて、隠した後に思い出す(5つ)
- 野菜の名前を言う(言えるだけ)
終わった後には、「お疲れ様~今日は頭の体操したね!」と声をかけてみましょう。
余談ですが、長谷川式の改訂を行った加藤伸司先生の講習を受けました。
ご自分の紹介をされるとき「ヒゲの加藤です」
とユニークに自己紹介され、とても印象に残りました。
認知症介護研究・研修仙台センターのセンター長を務められる加藤先生は、
臨床心理士で執筆も多く行われています。
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