音楽療法は 、音楽を人々の心身の健康に役立てる行為 です。認知症の症状が進行して、意思疎通が難しくなった方にも音楽療法を行うことで、動作の動きや表情にも変化が現れます。認知症のある方に実践している音楽療法をご紹介します。
音楽療法って何?
そもそも音楽療法とは
音楽療法とは、「音楽を人々の心身の健康に役立てる行為」です。
音楽療法は、障害児・者の方、精神障害の方、高齢者の方とさまざまな領域で用いられています。
日本において、音楽療法士の資格認定を行っている日本音楽療法学会では
音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、 ・心身の障害の回復 行動の変容などに向けて |
と定義しています。
認知症ケアの音楽療法は、「その人らしく、それぞれのペースで楽しめること」が前提です。
音楽療法の期待される効果
認知症を患う方にとって期待される具体的な効果には
- 記憶を呼び起こす
- リラックス
- 活性化
- 感情を動かす
- コミュニケーション
- 表現・創造の手段 などがあります。
残存機能の活用やQOL(生活の質)の向上が期待されます。
心理面へのアプローチが行われるのです。
音楽療法の方法
音楽療法には、能動的な方法と受動的な方法があり、それらをグループで行うか個人で行うかの場合があります。
能動的な音楽療法
能動的な音楽療法は、既成の曲や即興演奏などで、実際に歌ったり楽器を使ったりします。
受動的な音楽療法
音楽を聴くことで、リラクゼーション、瞑想、精神治療などを行います。
音楽療法は、音楽療法士による治療の一環としての取り組みが本来の意味ですが、レクリエーションとして取り入れる方法も、広い意味で音楽療法とし考えてもよいと思います。
認知症の方への実践 音楽療法の内容
音楽療法は、音楽療法士による治療の一環としての取り組みが本来の意味ですが、レクリエーションとして取り入れる方法も、広い意味で音楽療法とし考えてもよいと思います。
音楽療法士の実践内容
音楽療法士とは、「日本音楽療法学会認定音楽療法士」のことで、日本音楽療法学会の認定校を卒業し、筆記試験や面接試験を経て資格を有します。
認定校で、3年以上の教育を課せられた高度な音楽知識や技術を持った音楽の専門家です。
音楽療法の資格を持つ音楽療法士は、約6000人いると言われています。(2014年)
介護施設での音楽療法士による実践
音楽療法を治療の一環として取り組んでいる、病院や施設での実際の活動内容を見てみましょう。
約40名参加、1時間程度の内容
- 導入(BGM)
- 軽体操
- 季節の歌(歌唱)
- 楽器活動
- リクエスト曲(歌唱)
1.導入(BGM)
音楽が始まることを、楽器の演奏をすることで音で伝えます。
事前にリクエストを聞いておき、他にリクエストがあれば演奏します。
リクエスト曲例
「七つの子」「東京音頭」「川の流れのように」「浜千鳥」など
2.軽体操
腕を伸ばしたり、肩や首を回すなどの軽い体操。
3.季節の歌(歌唱)
その季節にあった歌を、参加者で歌います。
歌詞幕などが用意され、それを見ながら歌います。
季節の歌例
「早春賦」「スキーの歌」「海」など
4.楽器活動
民謡などを楽器で演奏します。
リズムに左右されない楽器(オーシャンドラム、ツリーチャイム)
リズムがある楽器(マラカス、鈴、カスタネット、小太鼓)
5.リクエスト曲(歌唱)
歌詞カードを見て選んだり、好きな曲をリクエストしてもらい歌います。
リクエスト例
「無法松の一生」「北国の春」「雨降橋」「二人酒」「りんごの唄」など
ボランティア活動によるコーラス
介護施設では、シニアコーラス隊の方々を招いて音楽会を開くこともあります。
ロングドレスを身にまとった方々の登場で、利用者の方も目を見開いていました。
コーラス隊の方々による合唱が3曲程度あり、その後に利用者の方も含めた全員で歌を歌います。
コーラス隊の方の曲は、「ペチカ」「ふるさと」など様々です。
皆さんで歌う歌には「北国の春」「上を向いて歩こう」など歌いやすい曲が選ばれています。
グループホームでの取り組み
グループホームでは、音楽療法というよりもレクリエーション活動として音楽を取り入れています。
音楽の専門家はいませんので、カラオケを取り入れたり、アカペラ形式で楽器を使わずに歌います。
歌詞のうち1番は、みなさんがよく覚えていて、アカペラ形式ですぐに歌え、歌詞カードも必要ありません。
他に、食事の時間はテレビを消して、クラッシッ音楽やヒーリング音楽(自然の音)を流して食事をしています。
認知症の方の音楽療法 実践の様子
音楽療法は、「音楽を人々の心身の健康に役立てる行為」によって効果を現します。
音楽の好みや、知っている音楽によっても効果の現れ方が違ってきます。
音楽療法が適さない方もいる
「音楽」は人生のなかで、何かしら関りを持っているものです。
しかし、歌を歌う、聴くということが、全ての方に良い影響を与えるわけではありません。
音楽療法を取り入れて、いつもと違う状況になると、認知症の方の中には
落ち着かなくなる方もいます。
「音楽」そのものではなく、違う状況が落ち着かなくさせてしまうのかもしれません。
大集団より小集団で変化のある方
イベント的な音楽療法の場合で、落ち着かなくなる状況の方でも、5人~9人ぐらいの少人数での取り組みに変化のある方もいます。
席を立つこともなく、歌詞カードをしっかり見て歌う様子がありました。
30分も歌うと気持ちが落ち着くのか、夜も起きることなくぐっすり眠れます。
認知症が進行しても音楽は感情に残る
日常で語彙の少なくなっている方の場合でも、歌の歌詞はスラスラ出てくるので驚きます。
また、意思表示が難しくなっている方では、手を膝のあたりで軽く打ち、リズムをとる様子があります。
身体に触れることを嫌がる方がいました。
身体に触れる介助では、大声で「助けて~」と叫び続けます。
しかし、訪問マッサージの技師が、30分この方の故郷の唄を歌いながら施術すると、叫ぶどころか施術が終わった後も、思い出したように歌いながら過ごします。
認知症が進行していても、「音楽」は感情に訴えかけるのだと思います。
まとめ
音楽療法とは、「音楽を人々の心身の健康に役立てる行為」です。
音楽療法には、能動的な方法と受動的な方法があり、それらをグループで行うか個人で行うかといった場合があります。
音楽療法の効果は、残存機能の活用やQOL(生活の質)の向上が目的とされています。
音楽の好みや、知っている音楽によっても効果の現れ方が違ってくることを覚えておいてくださいね。
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