
認知症と診断を受けても、軽度の場合はご自宅で生活することができますが、ご家族が対応できなくなると施設入所を考えます。しかし、施設費用は思ったより高額となるものです。費用を考えると入所は無理?でも、疲れやストレスが溜まってしまう。そんな施設の入所を検討して「お金がない」と思うときに役立つ制度などをご紹介します。
年金だけでは施設に入所できないの?
認知症状があっても自宅で生活できるとき
認知症状があっても症状が軽度の場合は、訪問介護やデイサービスなどを利用することで、ご自宅での生活が維持できます。
しかし、徐々に認知症状が進行し、昼夜逆転や徘徊・失禁などの症状が現れ、介護者であるご家族に負担が多くなってくると、介護疲れやストレスが溜りまじめます。
時間に制約のない家族介護は、実際に行ってみないと分からないほどの負担があります。
そうなると介護離職や施設入所を、検討しはじめることが多くなります。
施設を検討するときに、施設に入所して適応できるだろうかという心配もありますが、施設費用についても気になります。
年金所得額と施設費用
平成30年度 厚生労働省年金局 厚生年金国民年金事業の概要 によると、厚生年金と国民年金の平均年金月額はつぎの通りです。
・厚生年金保険(第1号) 147,240円
・国民年金の老齢年金 55,572円
一方、施設費用は、公的施設である特別養護老人ホームと民間施設であるグループホームはつぎの通りです。
・特別養護老人ホーム 8万円~15万円程度
・グループホーム 15万円~30万円程度
ご家庭のさまざまな事情で施設入所を考えた場合、公的施設に申し込んでも待ち人数が多くすぐに入所は行えません。
民間施設では、待ち人数が少ない代わりに施設費用が高額で、年金での支払いでは追いつかないことになります。
ご本人の所得は、年金だけとは限りません。
不動産所得や貯蓄などがあれば、ご本人の収入で施設費用を賄えますし、ご家族の協力で不足分を補充することもできます。
しかし、国民年金の基礎年金だけの場合は、ご家族の費用負担が高額となってしまいます。
お金がないときの利用できる制度
年金だけで施設に入所できないときは、ご家族が認知症状に困っていても施設入所はできないのでしょうか。
そのような時には、使える制度がないか確認してみましょう。
利用できる制度には次のようなものがあります、
・特定入所介護サービス費
・生活福祉資金貸付制度
・世帯分離
・生活保護
特定入所介護サービス費
特定入所介護サービス費とは、特別養護老人ホームの公的施設を利用する場合に「食費」「住居費」が減免される制度です。
ホテルコストとも言われる「食費」「居住費」は、原則として利用する方の全額負担になります。
しかし、所得の低い方には負担が多く、そのために施設を利用できないという方のために、不具合を補う制度です。
だだし、利用にあたっては、市町村から負担限度額認定証の交付を受けている必要があるため申請が必要です。
一定額以上の貯蓄がある方や、配偶者が住民税が課税となっている場合など対象外になります。
生活福祉資金貸付制度
収入が低い・障害があるなどの理由で、銀行などからお金を借りられない方に、生活を支援する貸付制度です。
連帯保証人がいれば 低金利または 無利子で利用することができます。
介護サービスを受けるときの経費が必要なときは、生活福祉資金貸付制度の福祉資金を利用します。
貸付金額は、580万円以内まで借りることができます。
貸付ですので返済が必要です。
多重債務者など返済が見込めない方の貸し付けは行えません。
ご相談は、市町村の福祉課または社会福祉協議会で受け付けています。
世帯分離
ご本人の年金収入が少なくても、配偶者に所得が多い場合や同一世帯の子供に所得がある場合は、世帯所得が高いことになります。
介護保険の自己負担割合は、同一の世帯収入で決まります。
施設に入所している場合は、生計を共に行っていないので、住民票上の世帯を分けることができ、単身世帯となり自己負担割合を少なくすることができます。
しかし、この制度にはデメリットもあります。
たとえば、同一世帯で2人以上が介護保険サービスを受けていて、世帯で介護費用を合算すれば、超過部分について払い戻しをできますが、世帯分離すると合算は行えませんので、割高になるケースもあります。
また、国民健康保険の場合は、世帯分離することで保険料が今までより高くなることもあります。
生活保護
制度を利用しても施設入所が無理だとお考えの場合は、生活保護の申請を考えてみましょう。
年金を受給していても、生活保護を受けることもできますので、検討してみましょう。
生活保護を申請する場合には、ご本人の資産がある場合は受理されません。
また、ご家族の資産状況や所得状況の確認も行われ、支援できる分がないかの確認も行われます。
年金を含めた世帯の収入が、生活保護の基準を下回る場合に、その差額が支給の対象となります。
ご相談は、市町村の福祉課や福祉事務所で行っています。
認知症の相談窓口
認知症の方がご家族にいる場合、精神面・金銭面などを相談するところを覚えておきましょう。
介護サービスや制度の利用に関しては、お近くの地域包括支援センターや担当のケアマネジャーに相談するとよいでしょう。
また、精神面でのご相談がある場合は、認知症の人と家族の会への相談をおすすめします。
認知症の電話相談
社団法人認知症の人と家族の会
電話受付(月曜日~金曜日 午前10時~午後3時)
0120-294-456
46ヶ所の支部でも電話相談を行っていますので、お問い合わせください。
さいごに
認知症状が進行しても、工夫してご自宅で生活することもできます。
症状には適切な対応があれば、進行を抑え維持することもできるのです。
しかし、息を抜けるときがないと、ご家族のストレスは溜まるばかりです。
同居することで大切だったご家族を、疎ましく思うようになるのは悲しいことです。
そのような時は、施設の入所を検討しても、よいのではないでしょうか。
大切なご家族を施設に入所させるときは、その決心も大変なものとなります。
費用面を安易に考えてしまうと、後々の経済的負担がのしかかることになりかねません。
そうならないためにも、利用できる制度があれば活用していきましょう。