夜の過ごし方
認知症の方で昼夜逆転などの睡眠障害があると、夜に寝付けずご本人も介護士も辛い夜を送ることになります。夜を穏やかに過ごしていただき、介護士にとっても平穏な夜を過ごすためにはどうしたらいいのでしょう。夜の過ごし方を具体的な例を見ながらその方法を考えていきます。
高齢者の睡眠
約3人に1人は睡眠障害がある
NHKの国民調査によると、60歳以上の約3人に1人の割合で睡眠障害があると言われています。睡眠障害には、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒などがあります。
入眠障害とは、夜なかなか寝付けない状態のこと。眠ろうとすればするほど眠れなくなり、朝4時くらいになっと寝入るようになってしまいます。
中途覚醒とは、夜中に何度も目が覚めてしまう状態のこと。一旦は寝入るものの、途中で目が覚めると寝付くことが難しくなります。
早朝覚醒とは、早い時間に寝入るために早朝に目が覚めてしまう状態のこと。朝の2時くらいになると、目が覚めて寝付けなくなります。
「ぐっすり寝た気がしない」
高齢者の睡眠は、寝つきが悪く、眠りが浅いのが特徴です。そのため少しの物音などでも目覚めてしまいます。
高齢になることによって、「メラトニン」という睡眠を促すホルモンの分泌が、減少することが要因ではないかと言われています。
人は深い眠りであるノンレム睡眠と、浅い眠りであるレム睡眠を繰り返しますが、高齢になるとノンレム睡眠の回数が減り「ぐっすり寝た気がしない」という感覚になります。
中途覚醒する利用者さん
トイレの起床ではじまる中途覚醒
利用者さんが、2時に覚醒して自室を出ました。いくらか寝ぼけているのか、介護士が「トイレですか?」と伺っても「そんなことはないんですよ」と言われます。
しかし、この時間の起床はほとんどがトイレのための起床です。そのため、お話を伺いながらトイレに案内しますが、トイレに入っても「私には関係ありません」と怒り出してしまいます。
夜中に目覚めると眠れない
このときの対応を間違えてしまうと、怒りのエネルギーが覚醒のエネルギーとなってしまいます。
トイレではないと言いはられるので、居室に案内しようとしますが「私はあっちに用事があるんですよ!」と、介護士が誘導しようとする反対の行動になってしまいます。
介護士の対応の分岐点
ここからが介護士の対応の分岐点といえます。夜中なのだから居室に戻るようにと説得をはじめると、意に反した行動を強制され利用者さんは、増々怒りをつのらせてシッカリと覚醒してしまいます。
そんな時は、フロアに案内してお茶の1杯でも飲んでいただきましょう。そして、あまり話しかけないことです。話に夢中になりはじめると、尚いっそう目覚めてしまいます。
なかなか寝付けない利用者さん
施設での入床は早すぎる
施設にいらっしゃる利用者さんの入床は、18時から19時までのかなり早い時間が多いものです。
見守りがフロアにいない状態で、夜勤の介護士が就寝介助に入ってしまうと、転倒事故が多くなるからです。そのため、遅番が勤務する時間帯に、利用者さんには入床していただくのです。
しかし、昼寝の時間が長くなってしまったり、テレビなどを熱心に見ていると眠れなくなります。
介護士の対応の分岐点
ここで時間だからと言って、無理に居室に案内しても利用者さんは寝付くことが出来ません。結局は、自室とフロアを行ったり来たりしてしまいます。
そんなときは、フロアを少し暗くして介護士と一緒に過ごしていただきましょう。少し軽食を出すのも、良いかもしれません。
高齢の方は、一度にたくさんの量の食事を食べられませんので、寝付くころ小腹が減った状態のときもあります。
バナナやお菓子など少量を召し上がっていただくことで、入眠につなげることが出来ます。
まとめ
利用者さんが眠れない様子のときは、その原因を探ることが必要です。
夜中トイレに起きたけれど「ここがどこか分からなくなる」そんな時は、不安で眠れないこともあります。
一人で寝るのが怖くなる利用者さんは、「一緒に寝ないかぁ」とさえいう方もいます。
夜は認知症の方にとっては、真っ暗な中で不安が増す時間帯でもあるのでしょう。寄り添って安心していただくのが、安眠のための一番の早道です。
利用者さんの安眠を優先することで、介護士にとっても穏やかな夜勤を終えることができるのではないでしょうか。