認知症の方の介護をするうえで、「突然怒り出す」症状に困ることがあります。話を聞くうち内容がヒートアップすることもある「突然の怒り」には、実はご本人の目的があることを知っておきましょう。介護士にできる対応を探っていきます。
突然の「怒り」
認知症の人が「怒る」とき
認知症は、記憶障害や判断力の低下などを伴う症状です。初期中期であれば「今までと何か違う」と感じながら、なぜ分からないるのか、なぜ出来ないのかを理解できなくなります。
思い通りにいかない状態が高じると、「怒り」という感情が優先してしまいます。では、認知症の人はどんな時に「怒る」のかを、考えてみましょう。
認知症の人はどんな時に「怒る」のか
- 指示通り行動しないとき
- 個人を配慮しないとき
- 個人のルールを侵害したとき
- 話を信じないとき などがあります。
介護現場をもとに、事例で見ていきましょう。
指示通り行動しないとき
利用者さんが、混乱しはじめると「〇〇しなさい」「遅いじゃない!なにやってんの!」と怒り出す。
個人を配慮しないとき
待ってもらっていると「人のことバカにしてんの!訴えてやる!」と怒り出す。
個人のルールを侵害したとき
入浴介助で脱衣所まで行ったとき、「裸になるなんてできません」と怒り出す。
話を信じないとき
「家に帰ります」「家族が心配していますから」と帰ろうとするので、引き留めるとき怒り出す。
原因を探って解決できるとき
- 排泄へ行きたいが場所が分からないとき
- バカにされていると感じるとき
- なぜここで裸になるか分からないとき
- 正しいと思いたいことを、否定されたとき
原因を探って対応できることもありますが、タイミングがずれたり適切な対応でないと、利用者さんは納得できずに更に怒り出します。
ヒートアップした状態では対応が難しくなりますが、その「怒り」に目的があることを知ることで、対応につなげることができます。
目的を果たすための「怒る」行為
認知症の人の感情は繊細
初期中期であれば「今までと何か違う」と感じながら、なぜ分からないるのか、なぜ出来ないのかを理解できなくなります。
当事者の方の話では「分からない」「出来ない」そんな時は、頭の中が真っ白になるのだそうです。ゆっくり考えると分かることが、一瞬に分からなくなるということです。
しかし、考える能力はあるのだと言います。何も分からないだろうと、ご本人を目の前にして症状のことを話すから「怒り出す」のだとも、話されていました。
人は言葉によっても「怒り」を覚えますが、感情を抑制することで「怒る」表現を押さえます。
しかし、認知症状があると感情のコントロールがうまく出来なくなり「怒る」表現が多くなるのです。傷つきやすく感情は繊細なのだと思います。
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「怒る」目的は実は4つに分けられる
「怒る」目的については、アドラーの心理学を引用しています。
- 支配するため
- 優位になるため
- 権利を守るため
- 正義感のため
「支配するため」とは、「怒る」ことで支配しようとすること。
「優位になるため」とは、「怒る」ことで自分の立場を優位にしようとすること。
「権利を守る」とは、「怒る」ことで自分の権利を主張しようとすること。
「正義感のため」とは、「怒る」ことで自分が思う正義を正そうとすること。
利用者さんが「怒る」とき対応によっては、感情を鎮められることもあるのです。それは、「怒る」目的を達したときだと言えます。
介護士の対応
介護施設だから行える対応がある
- 管理者の登場
- 丁寧な対応
- 主張を聞き入れる
- 誤りを正さない
認知症の方が「怒った」とき家族介護で難しいのは、気分転換しづらいことです。
介護士たちは、どんな怒りをかおうとも、職場を離れることで気分転換ができるのです。
この大きな違いがあるからこそ、介護士たちは仕事を続けることができます。
介護士を支配しようとする方には、管理者に登場願いましょう。エライ人と対等だと思えると、「怒り」が落ち着くことがあります。
バカにされたと思われる方には、「おもてなし」のような丁寧な対応を心がけます。
入浴や排泄に拒否がある時は、無理強いしないことです。
そして、間違いを責めたり正したりしないことです。利用者さんは間違っていること、分からないことは理解しています。ただ、なぜそうなるかが分からないのです。
まとめ
同じ条件でも、利用者さんの感情が「怒り」に変わるか否かは、対応にポイントがあります。
対応に困ったときは、「その場を離れる」という対応がありますが、利用者さんに考える時間を持ってもらうということです。
一人になって一いっそう不安になり、介護士を呼んだときは寄り添いましょう。
利用者の方々は、頭の中でいろんなことを考えているのです。そして、怒りを覚えたとき感情を抑えることが出来ず「突然に怒り出す」と周囲には見えるのです。
利用者さんの「怒り」の目的を達成するために、介護士が対応できる可能性があるということだと思います。