
認知症に限らず、高齢になると思い込みが激しくなります。ご家族や介護者にすると「どうしてそうなる?」と思うようなことが多くなるのです。間違いを正すと思い込みは一層激しくなり、症状を悪化させてしまいます。大切な人だから関係を良好に保ちたい、そんな時の対応を紹介します。
基本対応は話を聞くこと
否定せずに話を聞く
思い込みが激しい時の訴えは、非現実的なことが多く「えっ!なんで!」と思うことがほとんどです。
まずは、どのようなことを訴えているのか確認しましょう。
否定せずに、頷いて聞くことです。
訴えた人に「そんなことないでしょう!」と否定されても、思い込みが激しい時には一切聞き入れることができません。
それどころか、訴えていことを「真剣に聞いてもらえない」と思い、悲しい気持ちや苦しい気持ちが増幅してしまいます。
否定すると症状は強くなる
思い込みが激しい時に、その訴えを否定されると症状はさらに悪化します。
「訴えても聞き入れてもらいない」「わかってくれない」と思うようになると、何度も訴えを繰り返したり、他の人へ訴えるようになります。
認知症の症状を理解している人が、訴えを聞く分には問題ありませんが、無関係の人が聞くと、現実と思い込みの区別がつかないために、トラブルとなります。
訴えを肯定すると、思い込みが更に激しくなる
逆に訴えを肯定すると、思い込みは更に激しくなります。
聞いている人が「そうなの!大変ね!」といったように、その訴えを肯定すると、思い込みはご本人の中で事実となってしまいます。
思い込みの訴えは、自分を守るための訴えです。
「自分が何か被害を受けようとしている」「何とかしなくては」という思いが訴えとなっていきます。
話す相手が、信頼できると思う人の場合は相談する形になりますが、関係が良くない場合は、加害者となってしまいます。
思い込みには、メッセージが込められている
認知症に限らず、高齢になると記憶が曖昧になっていきます。
いつも探し物をしていたり、思い出せないことが多くなります。
また、加齢に伴い身体状況が悪化していきます。
「見えない」「聞こえない」「だるい」「痒い」など様々です。
それらは、自分の身に起きている被害なのです。
自分では気づきにくい変化を、「誰か」または「何か」のせいにすることで、元の自分を取り戻そうとしています。
寂しい、悲しい、辛いなど、その思いをくみ取る必要があります。
「物がなくなった」と思い込む
「物がなくなった」と訴えるときに多いものは、お財布や通帳などの貴重品が多いものです。
他人が欲しくなるような物であれば、訴えが強くなります。
その時は、一緒に探すことが一番です。
自分以外の人が見つけてしまった時は、自分で見つけられるように誘導しましょう。
自分で見つけないと「あなたが盗ったんでしょう」となりかねません。
「私はこっちの押入れを探すから、棚を探してみて」というように、誘導していきます。
自分で探しあてることで、納得していきます。
何度も同じことが続くと思いますが、関係を維持するためにも協力していきましょう。

「誰かが侵入した」と思い込む
記憶が曖昧になると、「いつもの場所にいつもの物がない」「物が移動している」と、自分で行っている記憶が薄れ、「誰かが入り込んでいる」と思い込んだりします。
実際に何度も引っ越しを繰り返し、その都度ご近所とのトラブルになる方もいます。
一人暮らしの高齢者に多く、寂しい思いや身体の不調が隠れています。
その時は、連絡を密にとるようにしましょう。
訪問するのが難し時は、電話で連絡するだけでも改善が見込めます。
何か悩んでいることや、不安なことがあるかもしれません。
「毒が入っている」と思い込む
食べ物に「毒が入っている」と思い込む場合があります。
料理を作る人との関係が良くない場合に多く、「なんだか味がおかしくないかい?」などと訴えはじめます。
関係を一気に改善するのは難しく、距離を置くのが適切です。
介護サービスを使い自宅にヘルパーさんを呼んで料理を作ってもらうこともできます。
介護施設でそのようなことがある場合は、上長に相談し移動を願い出ましょう。
「盗聴されている」と思い込む
高齢になると、聞こえが悪くなるといった症状の他に、自分の声が響いて聞こえたりするなど、聞こえ方にも変化がでます。
少しずつ変化したり痛みが伴わないため、ご自分の耳の不調と思わず「盗聴されている」と思い込んだりします。
そんな時は、聞こえ方をよく確認し、耳鼻科で受診しましょう。
その他にも、生活上の不自由がないかも確認するとよいです。
話をよく聞き、生活上の不自由を改善して訴えがなくなった方もいます。

思い込みが激しくなった時
思い込みの症状が現れて、すぐに対応できると症状は軽減します。
しかし、介護者側にも感情があり対応に苦慮することもあるでしょう。
その時は、家族や一人で悩まず第三者に相談することです。
ケアマネージャーに相談したり、認知症の家族の会などに参加してみましょう。
家族の会では、介護者側の気持ちを理解してもらえますし、同じ悩みを持つ方もいて、介護者の気持ちを打ち明けるだけで、新たな気持ちで接することができるようになります。
介護施設などであれば、他の職員や上長に相談することです。
理不尽と思えるような「思い込み」を正そうとしても、介護者との関係を悪化させるだけです。
介護者側に、こころの余裕がなくなると、苛立ちストレスが溜まるだけですから、相談して助けを求めていきましょう。
さいごに
「思い込みが激しい」時は、心身の変化のあるときです。
肯定もせず否定もせず、話をよく聞いてみましょう。
こころの悩みなのか、体の悩みなのか、生活上の不具合なのかを確認することが大切です。
そして、抱え込まないことです。
大切な家族であっても、対応でストレスが溜まってしまうと、やさしい気持ちで接することが出来なくなります。
相談することや距離を置くことで、新たな状況に変わることもありますから、抱え込まないようにしましょう。
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