こだわり
認知症状の中に「一つのことに集中するとそこから抜け出せない」といったこだわりの症状が現れたりします。物盗られ妄想などもその一つですが、今回は自分の要求に対してこだわる90歳代の女性のおはなしです。
その「こだわり」は夜に現れる
グループホームに入居した彼女は、寝たきりの状態から徐々に回復を見せました。3食をベッド上で食べ、排泄はオムツでの対応でしたが、ひと月もすると離床してフロアで過ごせるようになり、排泄もトイレに行っていました。
回復の状態がとても良かったので、職員たちは安堵しご家族も驚くほどでした。しかし、この頃から彼女の要求が始まります。そのほとんどが夜間帯なのです。
はじめは、就寝薬が決められた時間に届けられないとコール(呼び出しブザー)がなります。決めていた時間は夜8時でしたが、他の利用者さんの対応をしていると、予定通りに行けません。8時ジャストに行かないと、すぐにコールがあるのです。
その次には、軟膏の要求です。鎮痛作用のある固形軟膏剤なのですが、「あそこに塗って」「ここに塗って」と訴えます。
定時の巡視の時に寝息をたてているので、排泄介助を最後にしようと思って、他の方の排泄介助中に、彼女は目を覚まし「時間に来ない」とコールするのです。
バラバラケア
彼女を混乱させたのは、職員によるケアがバラバラだったことに原因があったかもしれません。
一つの要求を聞き入れると、要求はあれもこれもと増えていき対応できなくなる・・と言う職員もいれば、要求を拒否するから新しい要求が増えるのだ・・と言う職員もいます。
月に一度あるユニットカンファで話し合う予定でしたが、他の案件が優先してしまい、彼女のケアについて話し合うのは翌月となってしまいました。そしてバラバラケアが継続されてしまいます。
先手必勝!
夜間帯の申し送りでは、要求を受け入れないときにコールが多くなり、彼女は眠れない夜を送っているようでした。
ある職員が彼女の欲求に先手で対応することがありました。8時に内服予定の薬は10分前に届けます。定時の巡視の時は、寝息をたてていても声掛けして巡視の時間であることを伝えます。コールで呼ばれたときは「他に何をしたらいいですか」と確認します。
その日の対応は、彼女にも職員にもストレスがないようでした。
「こだわり」への対応は、否定しないことが原則だと思っています。
- 対応しないで様子を見る
- 第三者に話をつけてもらう
- 先手をうつ
など様々ありますが、今回の彼女への対応は、先手をうつ対応に効果があったようです。
しかし・・・性格?
管理者と彼女の話をすると、ご家族はもともとの性格だと言っていたそうです。「う~ん、あれは認知症のこだわりではなかったの??」と今も疑問の残るおはなしでした。