認知症介護 環境整備
認知症の方にとって、生活しやすい環境づくりは欠かせません。安全で落ち着ける空間や安心できる人とのつながりがあることによって、穏やかな毎日を送ることができます。認知症介護を行う上で、介護士が知っておきたい環境整備をご紹介します。
介護士ができる住宅の環境整備
物理的なバリアフリー
バリアフリーとは、障碍者や高齢者などが生活しやすくするために、生活の支障となる障害物を取り除くことです。物理的なバリアフリーは、一般に段差の解消や広いスペースの手すりなどを指します。
介護施設では、既に建設の段階で取り入れていますので、ここでは介護士ができるバリアフリーについて考えます。
具体的には
- 高齢者の場合、1、2㎝の段差でもつまづきやすいため、カーペットや電気コードは動かないように張り付ける工夫が必要です。
- 夜間の照明は、暗すぎると転倒事故にもつながりますので、居室内では常夜灯をつけたり、トイレの照明をつけておくのもよいと思います。
- 室内の温度差にも配慮が必要です。居室内からフロアに出た場合に、温度差が大きいと、ヒートショックといって血圧の変動で心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす可能性もあります。夜間でも温度差がないようにします。
- 生活動線には、荷物などを置かないようにしましょう。
空間づくり
認知症の方の中には、異食(食べられない物を口に入れてしまう)する方がいます。食卓にテッシュケースなどを置くと、テッシュを口に入れてしまうこともありますので、必要以外には片付けるのがよいです。
お天気の良い時はレースのカーテンを開けておきたいものですが、強すぎる光は刺激が強いこともあります。
台所で鍋など洗うときに、大きな音を立ててしまがちです。認知症の方は大きな音にはとても敏感です。刺激して緊張する場合もありますので配慮します。
フロアを徘徊する方で、四隅に放尿する方がいます。畑仕事をしていた方で、畑の角で排泄していたためです。四隅にバケツを置くと、そのバケツに上手に排泄していました。そのような工夫も必要です。
ゆったりと過ごしていただける、心地の良い空間を作りましょう。
介護士だから気が付きたい介護の環境整備
介護士の対応
介護士の対応や様子も環境に含まれます。
- 介護士同士の会話を大声で行う
- 介護士がバタバタを動く
- 利用者さんの席を頻繁に変える
- 利用者さんを無理やり一人にする
介護士同士の連絡など、ついつい大声でしてしまいますが、利用者さんにとってはとても気になることの一つです。
利用者さんには聞こえていないと思って話している内容は、聞こえていることもありますので注意しましょう。
介護士が出来る環境つくり
認知症の方には、トイレと表示されても認識できない方もいますので、便所・ご不浄と表記するのも方法です。
食事のときご飯だけを残される方には、黒い茶碗を使ってご飯の色と識別しやすくすると、食べられる方もいます。
また、スプーンを使用している方には、食器の淵がなだらかな角度のものより、浅くて鋭角に立ち上げてある食器の方が救いやすいです。
認知症介護で自立を助ける環境整備
五感を活かせる工夫
介護施設にいると温度設定がされていますので、季節感を失いやすいものです。それに加えて日時もあいまいになりやすいので、カレンダーの他に日めくりを目につくところに置くと良いです。
体操の時など利用者さんに「今日は〇〇月○○日の〇曜日です」と声掛けをして、意識していただくようにしましょう。
季節の花を飾ることや、工作をして季節のくだものを描いてみるのも方法です。
秋に干し柿作りを利用者さんと共に行うと、たいへん喜ばれます。
フロアの大きな壁に、季節を感じる作品を作るのも良いです。天井までの木の幹や枝を紙で作り壁に張り付けます。春には桜、秋にはもみじを型どった折り紙を、木の枝に張り付けると季節感がでます。
やりたいことを妨げない
畑仕事が好きな方が、カマをもって草取りなど始めたときは、一緒に付き添いましょう。
介護士が付き添うのは時間的に大変かもしれませんが、草取りをする良い機会にもなりますので、環境整備の一つとして考えましょう。
常に時計を見て時間を気にする方がいます。時間に少しでも遅れるとコールを鳴らしたりしますが、だからといって時計を取り上げたりしないようにしましょう。
時間の少し前に対応すると問題はありません。時計をなくして時間の感覚がなくなると、昼と夜の区別もなくなってしまいます。
まとめ
環境は物理的なことだけではありません。介護士の対応も環境の一つになります。
居心地の良い環境を提供することで、利用者さんは穏やかに過ごすことができます。
居心地の良い環境とは、信頼できる人間関係にあると思いたいです。