大声をだす
認知症に『大声をだす』という症状があります。介護認定調査では、この項目について『周囲の迷惑となるような大声をだす行動をとること』と記されています。実際の話をもとに、なぜ大声をだすのか、その対応についても見てみましょう。
症状として現れる『大声』
認知症状はゆっくりと進行している
グループホームに入居する90歳代の女性。彼女は記憶力・注意力・判断力が低下して、症状の進行を見せていました。
5分前のことを忘れことや食事に集中できない様子、下肢筋力の低下があり自力歩行が難しくなっていることを理解できずに、自分で歩きだすといった日常を過ごしていました。
大声をだし始める
彼女の動作は、日に日にゆっくりと緩慢さをみせていました。歩行が困難な状態になってから車いすを利用して移動しますが、移乗の動作がこれがまたゆっくりです。腰を支えて介助しようとすると、「自分で出来るから」と手をふり払います。
介護士も待っていられるときばかりではなく、やむなく介助すると「誰か~助けて」と大声で叫びます。あまりに大きな声なので、他の介護士が駆けつけるのです。
『大声をだす』ときはどんなときか
大声をだすのは『嫌なとき』
彼女の大声は、主に排泄介助のときに多くありました。排泄の感覚が無くなっていた彼女に、排泄の誘導はたいせつでしたが、トイレに行くと「さっき行ったから、大丈夫!」と拒否してしまいます。
入浴のときも同様で、浴槽に入るときの足挙げには介助が必要ですが、体に触れるだけで大声をだし始めます。
同じ動作でも大声をださないとき
移乗の動作でも声をださないのは、自分で何かをしようとしているときです。例えば、みんなのところへ自分も行きたいとき、部屋へ行って眠りたいときなどです。
効果的な対応
一旦介助を中止することです。嫌がっていることを無理強いすると、その介助はしばらく行えなくなります。誰かに代わってもらうのも効果的です。
他には一つずつの動作を導くことです。トイレに行ったら、まず手すりをつかんでもらう。足を少し引いてもらう。前かがみになる。腰を上げる。ズボンを下げたら、便座に座ってもらう。排泄のための動作を一つずつ誘導します。
彼女の場合は下肢筋力の低下に加えて、膝関節症で膝に痛みを感じています。このような場合でも、一つずつの動作を誘導することで、トイレでの排泄が行えます。
介助者のペースではなく、利用者さんのペースに合わせて介助することがポイントとなります。動作が始まるまで時間はかかりますが、このポイントを押さえると『大声をだす』ことはありません。ぜひ、試してくださいね。