高齢者の誤嚥
介護事故で多いのは転倒や転落ですが、次に多いのが誤嚥です。
高齢になると嚥下機能が低下し、食事をしたときにむせたり咳き込んだりします。このような状態の方を介護する場合に注意しなければいけないのが、日ごろの飲み込みの観察や食事の提供です。
誤嚥は窒息による死亡事故にもつながりますので、しっかりと学んでおきましょう。
高齢者の日ごろの嚥下能力
事故を予想する義務がある
介護の仕事をする上で必要なのことは、高齢者の生活で起こる可能性がある事故を予想することです。
介護士がヒヤリハットの学習や報告書を書くのは、事故を予想する力をつけるためです。
例えば、高齢者の方が食事をしているときに、むせたり咳き込んだりしている状態だったとします。
たまにむせたりするが、日ごろ自力で全量を摂取しているような場合は通常の食事の状態と言えます。しかし、頻繁にむせたり咳き込むような通常ではない状態で、誤嚥の事故につながると予見義務違反があるとされる場合があります。
つまり、高齢者の方がむせたり咳き込んだりしている状態で、誤嚥する可能性があったと介護士には予想できたにもかかわらず、それを認識しなかったということです。
食事介助をするときの注意点
誤嚥を起こさないために注意する点を確認しましょう。
- しっかりと覚醒しているか
- 頭が前に傾いているか
- 一口ずつ飲み込みを確認したか
- 嚥下の状態に合わせて食品を提供しているか
- 高齢者と同じ目線の位置で介助しているか
しっかりと覚醒しない状態では、不意に口の中に食事が入ることによって、気管に入りやすくなります。
口の中に入った食べ物は喉を通過すると食道と気管に分かれます。息をたくさん吸い込みたいときは頭を上げるのは、気管が分かれ道で前の方にあるためです。
頭を後屈させた状態では、食物が気管に入ってしまいます。
嚥下機能が低下してくると、一口はほんのわずかです。飲み込みを確認しないと、口の中に多量の食事が入ってしまいそれを詰まらせてしまいます。
嚥下に向かない食品を知っておくと、加工の良し悪しの判断が付きます。
嚥下に向かない食品
口の中でくっつく食品
- 焼き海苔・わかめ
- もなかの皮、ウエハース・生麩
- もち・団子
- 練り製品
- あんこ
パサパサ・バラバラな食品
- パン・カステラ・クッキー・マドレーヌ
- いも類、高野豆腐、ゆで卵
- ひじき・かまぼこ・ちくわ・豆
- ひき肉
- きざんだ食事
噛みにくい・ツルンとした食品
- たこ・いか・貝類
- きのこ類・れんこん・たけのこ
- ところてん・こんにゃく・寒天ゼリー
タイムリミットは3,4分
誤嚥事故が起きたときには、迅速な対応が必要になります。酸素が各器官に届かない時間が3.4分を過ぎると後遺症を残す可能性が高くなります。
誤嚥事故が起きた時には
- 応急処置を行う
- 医師や救急車の応援を求める を徹底します。
応急処置の『背部叩打法』と『ハイムリック法』
誤嚥したとき、高齢者には頭をかなり低く下げた「前傾姿勢」にさせ、介助者の手の平の付け根で肩甲骨の中間あたりを強く叩く「背部叩打法」(はいぶこうだほう)で異物を吐き出させます。
他に「ハイムリック法」があります。高齢者の背後に回り片手で拳をつくって親指をみぞおちの中間にあてます。反対の手で拳を包み横隔膜を上側に持ち上げるように突き上げて圧迫します。あばら骨を圧迫しないように注意しましょう。
意識がない場合は、心肺蘇生法の心臓マッサージを行います。
『119』救急車を呼ぶ
同時に他の人に頼んですぐに救急車を呼びます。
『119』に電話すると「火事ですか?」「救急ですか?」と聞かれます。
「救急です」と答えると
現在の場所やかけている電話番号・かけている人の名前を聞かれます。
状況を説明して応援を求めましょう。
助けを呼んで救急車を呼ぶまでの間、バイタルチェック・家族への連絡・個人情報が分かる書類などの準備をお願いしましょう。
まとめ
食事介助を安易に考えずにいることが必要です。むせたり咳き込むことが多くなったら、誤嚥になる可能性は高くなるということを、常に意識して介護をしていきましょう。