口腔ケア
利用者さんの介護をしていて、利用者さんの「お口が臭い!」と感じたことはありませんか?高齢者は口腔内が乾燥することによって、臭いの元となる菌を増殖させています。口腔内の菌が肺に入ってしまうと、肺炎を引き起こします。肺炎を予防し口臭をなくす口腔ケアですが、認知症で拒否される方にはどのように対応したら良いのかをご紹介します。
利用者さんの口腔ケアはとても重要
唾液が減ると口の中に細菌が溜まる
高齢者の方は口腔内の唾液の分泌が減っていきます。薬剤やかむ力の低下などが原因です。
口腔内を乾燥させてしまうお薬には、降圧剤(血圧を下げる薬)や向精神薬(抗不安薬、睡眠薬など)などがあり、多くの高齢者の方が服用されています。
また、入れ歯を着用する方の場合は、かむ力が弱くなります。自分の歯でかむ最大の力が20Kgであるのに対し、総入れ歯では6Kgが最高と言われています。
かむ力が弱くなると、唾液の分泌が減少しますので口臭の原因になります。
唾液には、歯の表面・舌・口の中の粘膜についた汚れや細菌を洗い流す作用があります。唾液が少なくなることによって、口の中には菌が停滞しやすくなるのです。
誤嚥性肺炎を予防するための口腔ケア
食べ物を飲み込む力が衰えてくると、食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。
口の中に溜まった細菌が肺に入ってしまうと誤嚥性肺炎を起こしてしまいます。高齢者の死因の第三位と言われる肺炎の多くが、この誤嚥性肺炎です。
口腔ケアは、細菌の溜まりやすい高齢者のお口の中のケアとして重要ですし、歯周病の予防にもつながります。
口腔ケアを行うことで、口腔機能を改善できれば食事をおいしく食べることもできますし、表情も豊かになります。
歯磨きを拒否する認知症の方の口腔ケア
認知症状のある利用者さんの場合、歯磨きを嫌がる方がいます。ご自分で磨くことが難しく介助を行うわけですが、口を開くことさえ嫌がってしまう場合もあります。
「歯磨き」という行動の理解ができていなかったり、「歯磨き」自体の意味が分からなくなっているためです。口腔ケアが行えないと利用者さんのお口の中に細菌が溜りやすくなり、口臭も強くなります。
ぜひ試して頂きたい‼口腔ケアを嫌がる利用者さんへのアプローチの方法をご紹介します。
介護士が手本を見せる
口腔ケアを嫌がる利用者さんの原因の一つに、口の中に異物(歯ブラシやスポンジブラシ)を入れられるということがあります。
口の中にわけのわからない物を、入れられたら誰でも嫌がります。
まずは介護士がスポンジブラシを使い、歯磨きする様子を見てもらいましょう。口の中に入れても良いものであると分かると、スムーズに行えることがあります。
口を大きく開けて見せる
「口を開けてください」という言葉が伝わっていないこともあります。
介護士自信がが大きく開けることで、動作を促すことができます。口を大きく開けて「あ~」と声をかけたり、歯磨きをするジェスチャーを加えると、利用者さんは「あぁ、口の中を磨くのね」と理解してくれます。
介護士は利用者さんの目の高さまで姿勢を落としてジェスチャーを行いましょう。介護士が見下ろすような位置にいると、利用者さんに威圧感を与えてしまいます。目の高さ程度にいると、利用者さんは動作を理解し受け入れやすくなります。
味があることを知らせる
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どうしても口を開けて頂けない場合は、口腔ケア用のジェルを唇に少し付けます。少し付けるだけでも利用者さんは口を閉じたり、舌で拭き取ろうとします。
拭き取ることによって利用者さんの口の中にジェルが入ると、ジェルの味を感じます。一般の歯磨きだと研磨剤が入っていて口の中がざらつきますが、ジェルはトロッと口の中に馴染みます。
味がついていると、食べ物だと思うようで口を開けていただけます。おススメはリンゴ味です。利用者さんはこの味を好きな方が多いです。
口腔ケア用のジェルは、抗菌作用があり食品添加物にもなっていますので、口腔ケア後の拭き取りが難しく行えなくても大丈夫です。
介護士の口臭も気をつけたい
口臭は高齢者だけではありません。介護士仲間にはいませんか?ご自分のお口の中の健康は保たれているでしょうか。
虫歯や歯周病がある時は、患部が化膿し臭いの元になっている場合もあるので歯科で治療を受ける必要があります。
口腔内の乾燥は、高齢者だけではない
口臭の原因となる口腔内の乾燥は、空腹や疲労でも起こりやすくなります。朝忙しくて朝食を抜いたり、仕事で疲労やストレスがある時は注意しましょう。
きちんと歯磨きをしているのに、肺から出てくるガスで口臭が強くなっていることがあります。
また、空腹時や喉が渇いている時にコーヒーを飲むと、口臭が強くなります。口腔内の細菌が活発化しやすくなるといわれているためです。
自分では気づかない口臭
他人の口臭は気づきますが、自分の口臭は気づきにくいものです。口に手を当てて臭いのチェックをしましょう。
自分では気づかない息の臭いを具体的な数字で確認したい方には、口臭を測定するブレスチッカーという測定器があります。
まとめ
総入れ歯を使っている高齢者の方には虫歯はありませんが、口腔内が乾燥することによって菌が増殖している可能性があります。
認知症などで会話が少なったり口腔ケアを嫌がったりすることも、菌を増やす原因になります。
口腔内の菌の増殖は、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があることを理解して介護にあたりましょう。
