介護にはコミュニケーションスキルが、とても大切です。コミュニケーションがうまくいくと、実は介護が楽になります。認知症で介護拒否のある方に試していただきたい3選をご紹介します。コミュニケーションが苦手という介護士の方必見です!
名前・出身地からグ~ンと接近する方法
お名前で声掛けするのことの効果
介護の現場では、利用者さんをお名前で呼ぶことが多いですが、どのような状況になっても変わらないのが「名前」だからです。
養子縁組や結婚で「苗字」は変わりますが、「名前」は一生変わりません。
作家の湊かなえさんの『山猫珈琲』というエッセイ集に、「名前」で呼ぶのは両親や幼いころの友達が多く、「安らぎや安心感を感じる」といった内容が書かれていました。
幼いころは「苗字」で呼ばれることはありませんから、親しんだ「名前」で声掛けしましょう。
「名前」で呼ぶと、相手に好感度を上げるという効果もあるそうです。
ただ、ご自分の「名前」が嫌いな利用者さんもいますから、注意しましょう。
出身地の話で近隣の地理が理解できてしまう
出身地など記憶に残る土地の話を伺うと、コミュニケーションがスムーズになります。
排泄介助に拒否のある利用者さんがいます。その利用者さんをトイレに案内するまでの間、出身地の話を伺いながら介助すると、ほとんど拒否がありません。
春には桜の名所、夏には海水浴場の場所など聞いているうちに、近隣の地理に詳しくなりました。その利用者さんが言う地名は今は存在しませんが、地図を見ながらこの辺りだろうと想像でき楽しみにもなります。
ご家族の話も効果があります。幼いころの家族構成を尋ねると、兄妹の人数は曖昧になっていたりしますが、「父は社長です」「やさしい母だよ」と嬉しそうに話してくださいます。
こんな会話のときも、介助がスムーズに行えるのです。
コミュニケーションは会話だけではない
触れるコミュニケーション
言葉以外による非言語コミュニケーションは、コミュニケーションの7割と言われています。表情・視線・しぐさなどが、それにあたります。
その中に触れるコミュニケーションもあります。高齢になるほど人のぬくもりに触れなくなります。やさしく触れられると、人は安心できるものです。
相手にタイミングを合わせる
利用者さんにタイミングを合わせることは、とても重要です。
タイミングを合わせるとは、利用者さんの動作のペースに合わせるということです。ゆっくり話をするような方には、ゆっくりとうなずく。早いスピードで話す方には、そのペースに合わせうなずきます。
人は自分と似ている人に、親近感を持つと言われています。「出身地が同じだ」と聞くと、親近感が持てるようになるのはそのためです。
『笑い』が苦手を克服する
笑いや共感を呼ぶ『オノマトペ』
先日、『介護エンターテイナー』と名乗る石田竜生さんのYouTubeを見ていました。オノマトペ(擬音語や擬態語)を体操に取り入れて、利用者さんに体を動かしてもらおう!というものです。
擬音語とは、物が発する音のことでメーメー(羊の鳴き声)・トントン(肩たたきの音)・ビリビリ(紙をやぶる音)などがあります。
擬態語とは、音がない状態や感情などを模倣したもので、パラパラ・ヒラヒラ・そよそよなどがあります。
実際に試してみました。体操のときに「グングン、グングン手を伸ばして~」と声をかけてみます。介護士自体のアクションも大きくなり、それにつられるように利用者さんの動きが大きくなりました。
そして、利用者さんたちに、笑いが絶えないのです。
石田竜生さんは、作業療法士として働きながら、お笑い芸人、舞台俳優の活動も続けているそうです。
笑いを誘うコミュニケーションが苦手でも、この方法なら利用者さんに笑っていただけます。利用者さんに笑顔があると、介護士にもやる気が出るものです。
大切なアイコンタクト
利用者さんと目線を合わせることで、自分を受け入れる準備をしてもらいます。この時に必要なのが、笑顔です。
ジ~ッと見つめると威嚇した感じを与えますが、笑顔で目線を合わせることで受け入れてもらえます。
私は、このアイコンタクトで拒否を改善できました。
入職したての頃、どうしても排泄介助をさせてもらいない利用者さんがいたのです。日に何度もある排泄介助ができず、その度他の介護士に交代してもらいました。
「何とかしたい!」と思いあれこれ調べ、アイコンタクトを取り入れたのです。
ニッコリと目線を合わせることを繰り返し、そこからコミュニケーションが始まるようになりました。
コミュニケーションが取れるようになると、介助に拒否がありません。今はこの利用者さんの排泄拒否があるときに、他の介護士の助っ人に入れるようになりました。
まとめ
コミュニケーションとは、気持ちを相手に伝え通じ合うことです。介護にはなくてはならないスキルだと思います。
認知症の方は、自分の思いをうまく伝えられないことが多いのです。伝えられない思いが苛立ちに変わると、拒否や暴言、暴力となっていきます。
介護技術も大切なスキルですが、コミュニケーションのスキルを高めて、利用者さんそして自分たちにも、負担のない介護を試みていきましょう。