2019/8/15

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介護士アラカルト

介護士の現状 認知症の進行で「無駄だ」と思うとき

投稿日:

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カルタ

介護士が忙しく動くグループホームの中で利用者さんが、朝から晩までソファに座り居眠りする姿を見ると、なんとも悲しくなります。介護士の人員はギリギリで、安全を確保するのがやっとの状況です。認知症状が進んだ利用者さんへの働きかけに「無駄だと思う」といった気持ちを持ち始めると、何も始まらないものです。今の介護士たちの現状とその思いについて見ていきましょう。

介護業務の現状

介護士の業務

朝7時の早番は30分程前に出勤します。出勤してすぐに記録の確認をして、自分たちがいない間に利用者さんにあった変化を確認します。

次いで、朝食の準備に取り掛かります。薄味にする方、好き嫌いのある方、刻み食やミキサー食への調理などなど、夜勤者が調理を終えた食事を利用者さんの状態に合わせます。

配膳が終わると、ご自分で食事が出来ない方の食事介助をし、食事が終わると服薬の介助をします。手渡して、飲み込みを確認します。食事が終わると、歯磨きの介助をします。

8時30分に日勤者が出勤します。申し送りがされ、トイレやフロアの掃除をします。前日の洗濯物を片付け、必要な方にはトイレへ案内します。

10時遅番者が出勤します。体操をして一服の飲み物を提供します。この後、食品の買い出しや日用品の買い出しに出かけます。

爪切りや綿棒などで耳掃除をしたり髭剃りの準備など、整容のお手伝いをします。痒みを訴える方には、軟膏を塗ったりもします。

来客や電話の対応、通院の準備、薬の仕分け、献立の作成、イベントの企画、記録の作成などなど、午前中はあっという間に過ぎていきます。

介護士たちは食事を流し込んでいる

利用者さんの体調は、いつも良好とはいきません。熱がある、ふらつく、咳をするなど都度対応しています。

呑み込みが悪い利用者さんの食事介助をするときは、利用者さんにゆっくり召し上がっていただけるよう、自分の食事を流し込んで食べてしまいます。

利用者さんが食事を喉に詰まらせていないか、水分は摂れているか、食べにくい様子はないかなど、周囲を見回して注意しながら食事をするのですから、ゆっくり味わっている余裕はありません。

「安全確保」と「あきらめ」の現状

何を優先すべきか

グループホームは、認知症の進行を緩やかにするために創られた制度です。個別対応をすることによって、その進行を抑えていこうとします。しかし、現状はそうはいきません。

下肢筋力が弱くなった状態で、歩き出そうとするとき、転倒の危険がとても大きいのです。「座ってください」といえば、スピーチロックといって身体拘束になります。近寄って歩行の介助をすると、他の利用者さんが職員を呼ぶ。

利用者さんの安全の対応をすると、洗濯物は干せずトイレ掃除もままなりません。

安全確保という名のあきらめ

転倒で骨折した場合、少なくとも1ヶ月は寝たきりとなるのがほとんどです。その間、足腰はいっそう弱くなり、認知症状は進行します。

私たち介護士は、日々事故のないように支援しなければなりません。その上で、家事的な業務や記録は溜めておけませんから、いつの間にかそちらを優先してしまいます。

気が付くと、利用者さんのこころのケアや自立支援の援助を、後回しにして行えなくなってしまいます。

利用者さんへの働きかけがなくなると、利用者さんはソファに座ったままになっていくのでしょう。

夢を持つ介護士たち

「無駄だと思うよ!」

ユニットの平均介護度が3以上になると、自立出来ることが少なくなります。排泄や入浴、食事にも支援が必要になります。

そんなユニットの中で「カルタをしてみましょう!」と言い出した介護士がいました。見えづらい方、聞きづらい方が多い中ですから、その提案に「無理だと思うよ!」と言った介護士がいます。

わたしも半ば、難しいと思いました。思い出の歌を歌う、ボール蹴りをするなどは出来ていましたが、五感をフルに使うカルタは、やったことがありませんでした。

出来たとしても、ユニットの利用者さん9名が加わるのは難しいだろうなぁ。と思わずにはいられませんでしたが、「やってみなければ、わからない」という思いもありました。

歓声が上がる『カルタ』

通常より大きめのカルタが、テーブルに並びました。一つのテーブルに9名の利用者さんが、ギュウギュウに並びます。

いつもは、居眠りしている利用者さんが「何が始まるんだろう」とのぞき込んでいます。

「私はわかんないよ」という口癖の利用者さんは、やはり「私はわかんないよ」と言いながらも、テーブルのカルタに見入っています。

介護士がカードを読み上げると、耳の遠い利用者さんは「えっ!今なんて言ったの!聞こえないよ」と言って、カードを介護士に読み返させます。

いつも「見えません!真っ暗です」と言う利用者さんは、3枚のカードを獲得しています。

いつもは利用者さんの声の聞こえないフロアに、「ワ~」だの「オ~」だのと、歓声が上がりました。

一番カードを獲得したのは、昨日「私のことバカにしてんのかい!」と怒鳴っていた利用者さんです。

あきらめない介護

介護という仕事に「夢」と「現実」のギャップがあり過ぎて、あきらめることが多い毎日でした。

「無理だと思うよ!」と言った介護士もいれば、「やってみなければわからない」と思う介護士、積極的に「やってみましょう」という介護士がいるのです。

あきらめてしまえば、今日の利用者さんの笑顔を見ることは出来ませんでした。

そして、何かしようとするとき、聞きづらい方は聞こえるように介護士に催促し、見えづらい方は目を凝らして見るものなのですね。ご自分で何とかしようと、一生懸命でした。

このとき、これこそが自立支援なのではないかとさえ思えたほどです。

「無理だと思う」そう思い始めていましたが、それは利用者さんの状態ではなく自分のこころの状態だったのかもしれません。

こんなに楽しそうに笑う利用者さんの姿を見ていると、まだ私にも出来ることがあるかもしれないと思えるようになりました。

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