歩行を安定させ足腰の負担を減らす介護の杖。人の手を借りずに歩けるときは、福祉用具でもある杖を使って、歩く機会を増やしていきましょう。そんな介護杖の ポイントとなる杖の長さと、介護杖の 選び方や使い方について紹介します。
杖の長さの決め方
身体に合っていない杖の長さは、肩こりや手首を痛める原因になり使いにくくなります。
杖を購入するときや、長さを調節できる杖を購入したときに、知っておきたい長さの決め方を紹介します。
一般的な決め方
- 自然に立った状態で手を下げたとき、床から手首の関節まで長さ
- 床から腰骨(大転子)までの長さ
- 足先の前方約15cmに杖を置いたとき、杖をまっすぐ立て肘の角度が150度程度の長さ
前屈みの高齢者の決め方
- 前屈みのいつのも姿勢で身長を計り、その身長の半分の長さに3cm加える→(身長÷2)+3cm
- 一般的な決め方で、2~3㎝短めの長さ
例)身長140cm÷2+3㎝=73cm
ポイント
上記の長さを調べると、ほぼ同じ長さになります。
測ってみてから、実際に楽に使えるか試してみましょう。
杖を使う場合は、屋外が多く靴の高さも影響しますので、靴を履いて測ってみみてください。
また、伸縮式以外の杖を購入したときは、購入先でカットしてもらえますので、杖の長さが合っているか確かめてから、カットしてもらいましょう。
介護の杖の選び方
杖の種類を選ぶ方法
杖には次の種類がありますので、使う方に合った杖を選びましょう。
- T字型杖
- ロフストランドクラッチ( 肘支持型杖 )
- 多脚型杖(多点型杖)
- 松葉杖
他に盲人用の白杖があります。
1.T字型杖
自立で歩行できる方向け
真っすぐな杖にグリップ(握り手)が付いているタイプ。
もっとも普及していて誰でも簡単に使え、軽量(200~500g程度)のものが多いです。
体重の1/6程度しか補助できないため、自立で歩行できる方のサポート用として使います。
- 外出に便利な折りたたみタイプ
- 長さを自分で調整できる伸縮タイプ(画像)もあります。
デザインが豊富で、お好みのベースカラーを選んだり、花柄のデザインや幾何学模様などを選ぶことができます。
2.ロフストランドクラッチ ( 肘支持型杖 )
握力がない方向け
肘下の前腕部にカフ(輪っか)がついていて、グリップと前腕の2ヶ所で体を支えます。
2ヶ所で支えることにより体重が分散できるため、T字型より安定して身体を支えることができます。
手に変形のある方・片麻痺の方・足に体重をかけられない骨折や捻挫などの方に向いています。
カフには、はめやすいU字タイプと、しっかり固定できるO字タイプがあります。
3.多脚型杖(多点型杖)
脚力が低下している方向け
杖先が3点または4点に分かれ、着地面積が広いため安定しています。
体重をかけても倒れにくく、足に力が入りづらい方・姿勢の悪い方・背骨の曲がっている方などに向いています。
平らな面では安定していますが、段差などでは杖先を引っかけてしまうことがあり不安定になります。
公共施設・病院・介護施設など、平らな場所が多いところで使うと安全です。
4.松葉杖
片足に体重をかけられない方向け
重い荷重に耐えられる杖で、骨折などで片足に体重がかけられないときなどに使います。
身体の左右のバランスを補正してくれるため、2本1組で使用することが多くなります。
身体に合わせるときは、握りの高さと脇当ての部分を調整します。
脇当ての高さは、脇の下ではなく脇から卵分の間をあけて高さを決めます。
杖の材質
杖は、長さの他にも軽さや丈夫さにも、注意しながら選んでみましょう。
杖の本体である棒の部分(シャフト)に使われている素材には、次のようなものがあります。
- アルミ製
- カーボンファイバー製
- 木製
1.アルミ製
杖の素材で多く使われるのがアルミです。
加工しやすく、腐食しにくいので杖に適しています。
2.カーボンファイバー製
アクリル繊維を焼いて炭化させてつくるのがカーボンファイバー(炭素繊維)
アルミの5倍の強度をもち、金属より軽い特徴をもちますが、加工が難しいと言われています。
そのため高価となりますが、4千円程度でも購入することができます。
3.木製
重厚感があり、木目の色合いが美しい杖の素材。
木製ですので加工がしやすく、カットして長さを調整します。
高級杖に多い素材ですが、アルミよりも重く介護用として使う場合は重量も確認しましょう。
杖の太さ(直径)
杖のシャフト(棒の部分)の太さは、直径が19~20mmのものが多く、太いもので22~24mmあります。
太いほうがより安定して使えますが、その分重くなります。
杖のグリップ
杖を選ぶときは、グリップ部分にも気お付けてみましょう。
グリップの素材には次のようなものがあります。
- 木製 一般的素材・傷がつきやすい
- アクリル樹脂製 強度があり劣化しにくい・加工がしやすく細くできる
- ソフト樹脂製 滑りにくい・圧力を吸収し手にやさしい
グリップの形状はT字型・L字型・丸型などがあり、右手専用・左手専用のリハビリ杖もあります。
手の大きさや握力によって、握りやすさは違いますから店頭などで、実際に握ってみましょう。
杖先のメンテナンス
杖先についているゴムは、使っているうちにすり減ります。
すり減った溝にゴミなどが入り込むと、滑りやすくなりますのでこまめにお掃除したり交換していきましょう。
替えゴムは、ネットでの購入も行え価格は150円~あります。
知っておきたい杖の使い方
杖を使う前に知っておくこと
杖の持ち方
足のどちらかに痛みがある場合は、支える面積を広くするために、痛みのある足と反対の手で持ちます。
握り方は2つあります。
疲れにくい方法 人差し指と中指でまたぐように握る
固定する方法 人差し指を杖に沿わせて握る 引用元:amazon.co,jp
杖をつく位置
足のつま先から、横と縦に15cm程度の位置に杖をついて使います。
杖を使って歩く
平面を歩く方法
安定性のある3点歩行と、早く歩ける2点歩行があります。
3点歩行 (杖→患→健)
- 杖を前に出す(足先の横・縦15cm前、痛い足の反対側に杖を持つ)
- 痛いほうの足を前に出す
- 良いほうの足を前に出す
足に痛みはないけれど、安定してゆっくり歩きたい場合は、杖を聞き手に持ちます。(杖→患→健と覚えましょう)
2点歩行
- 杖と痛いほうの足を、同時に前に出す
- 良いほうの足を前に出す
バランス能力が必要になるため、痛みが強いときは3点歩行にします。
段差の上り下りの方法
段差を上るとき (杖→健→患)
- 杖を段差の上につく
- 良いほうの足を、段差の上に乗せる
- 痛みのある足を、段差の上に乗せ足を揃える
階段を下りるとき (杖→患→健)
- 杖を段差の下につく
- 痛みのある足を、段差の下に乗せ下りる
- 良いほうの足を、段差の下に乗せ足を揃える
障害物を乗り越えるとき (杖→患→健)
- 杖を障害物を越えた所につく
- 痛みのある足を、障害物を越えたところに置く
- 良いほうの足を、障害物を越えたところに置き足を揃える
階段を上るときだけ足が反対になりますが、それは階段の上に体を引き上げるために、より力のある足を先に出して体重をかけ、体を安定させるためです。
さいごに
杖の長さを決めるポイントは、「床から手首の関節または腰骨までの長さ」「足先の前方縦・横それぞれ15cmの位置に杖を置き、肘が150度になる位置の長さ」で決めていきます。前屈み姿勢の方は (身長÷2)+3cm 程度にします。
杖を選ぶときは、「自立で歩行できる方にはT字型」「握力のない方にはロフストランドクラッチ( 肘支持型杖 )」「脚力が低下している方には多脚型杖(多点型杖)」「 片足に体重をかけられない方には松葉杖」を選びましょう。
杖の使い方は基本的に、 (杖→患側→健側) の順で使い、階段を上るときだけ逆に (杖→健側→患側) とします。
以上のことに気をつけて、介護の杖を上手に使いましょう。